18・岸田屋
もんじゃ焼きで有名なこの月島に、東京三大煮込みのひとつと称される店がある。 その名も岸田屋。 明治創業というこの店は、有名なグルメ漫画「美味しんぼ」の栄えある第1巻に登場しているともいう。 美味しんぼはどうでもいいとして、東京の下町といえばモツ煮込みでしょうと信じて疑わなかった我々には、話を聞いただけでヨダレが隅田川になってしまうほどの待望の店だ。 ただし難点が。 かくなるうえは、夕刻5時の開店時を狙うしかない。 というわけで、やってきました岸田屋!! ……といいつつ、もんじゃストリート沿いにあるので、すでに昼間その前を何度も通っていた。 その行程を考えるとなんともバカらしいものの、日中歩き回った体には風呂が気持ちよかったことはたしかだ。 気がはやっていたために到着が早すぎたんだけど、すでに我々よりも早く来て並んでいる人たちがいたのには驚いた。 外で待つヒトのために席まで用意してあり、この季節はわざわざひざ掛けまで置いてくれてある。 幸い作戦は成功して、オープンと同時に席に着くことができた。 一番搾りの生で乾杯し、さっそく魅惑の肴を注文。 まずはこれ。 ぬた! これが沖縄になると酢味噌和えになるところ、あくまでも上品かつ美しく。 そしてお待ちかね、これが岸田屋のモツ煮込みだ!! いろんな中身がじっくりコトコト煮込まれたこのモツ煮、それはまるで中身入り牛汁をさらに味クーターにしたように濃厚で、一口いただくたびにそれぞれのモツから滲み出る出汁はまさに絶品。 これがまた添えられた長葱と合うんだわ。 この瞬間のために今日1日生きていたといってもいいオタマサも大満足である。 あまりに美味しかったので、あとで「ハーフ」をさらに頼んだほどだ。 そしてこちらは、この店の人気メニューのひとつでもある肉豆腐。 この肉と葱が形作るモンブラン級の山の下に、豆腐が静かに息づいている。 味自体はすき焼きのような感じなので、モツ煮込みのような文明開化的目から鱗級衝撃はないものの、しみじみ美味しい家庭の味が多くのサラリーマンに受けているのも頷ける。 生ビールで喉を潤した後は、日本酒に突入。 というわけで、純米酒澤乃井を常温で。 女将さんに「注いでいるところを撮っていいですか?」と断ったところ、 「あら、緊張しちゃうわ♪」 と言いながら、ドボドボドボと豪快に入れてくださった。 スタッフのおねーさんも感じのいい人たちだけど、この女将さんがまた素晴らしい。 そんな純米酒澤乃井をクイッとやりつつお願いしたのが、ほかでもない…… 穴子♪ 穴子仮面、歓喜に震えるの図。 これがまた辛口の澤乃井に合うこと合うこと。 菜の花のからし和えや、 くらげの酢の物、そして… 気合のキンメの煮つけ! それらを澤乃井で流し込む。 縦棒が極端に短いコの字型カウンターには、一人で来ている人、友人と2人で来ている人、男女で来ている人たちが楽しげに飲んでいて、オープンからずっと満員。 東京3大煮込みの店であるここ岸田屋に来ることを旅行前から決めていた我々としては、3大煮込みと言われても他の一般の煮込みを味わったことがないから、是非とも前哨戦として新橋の加賀屋でモツ煮込みをいただきたいところだった(新橋で加賀屋にこだわっていたのはそのため)。 残念ながらその願いは叶わなかったので、結局他と比較のしようがないけれど、ウワサに違わぬ名店ぶり。 おかげで、まだ宵の口というのにすっかりゴキゲン状態になった我々なのだった。 そしてまたひとつ、上京の際に再訪したい店が増えた。 時刻はまだ午後7時前。 〜♪ Bad Bad Whisky……Bad Bad Whisky……というわけで吉田類化して締めたあとは、すでに紹介した夜景などを楽しみつつ、銀座へ戻ってきた。 けっこう飲んで、かなり腹も一杯で、すでに充分満ち足りていたんだけど、まだ時刻は午後8時過ぎ。 そこで!! やってきました、中華そば屋の萬福。 当初の予定では銀座滞在の冒頭のどこかでお昼にラーメンでも…と考えていて、そのためだけに銀座界隈のラーメン屋情報をゲットしていた。 そのうちホテルの近くにも何軒かあって、ここ萬福さんは、大正時代の屋台時代を経て、昭和4年にこの地に開業した、銀座の中でも老舗中の老舗だという。 東京にいる間に一度はラーメンを食べておきたいといっていたオタマサだったので、そんな老舗中の老舗で昔ながらのラーメンを!! うれしいことに、サッポロラガービールの文字がメニューに。 そしてお待ちかね、萬福ラーメン登場!! 大正の創業から変わらぬ味という老舗のラーメン、そのお味は?? うーむ………わからん。 ある程度の年代のヒトは昔を思い出す味なのだそうなのだけど、昔それほどラーメンを食っていたわけではないし、今の生活はずっと沖縄そばなので、今も昔も関係なくラーメンの味の基準点が僕にはないのだった。 一方うちの奥さんは、お腹一杯で食べられない…とかいいつつ、ワンタンメンを頼んでいた。 「うーん、可もなく不可もなく……」 食わせ甲斐のない我々ですみません。 ※おまけ この萬福さんの隣に、ここが銀座ですか?と思わず目を疑う建物の居酒屋がある。 その名を秩父錦という。 実に魅力的だったものの、銀座に来てさしみこんにゃくでもあるまいと思い、今回はスルーしていた。 この夜思いっきり隣まで来ていながら、すっかり忘れてしまっていた。 |