16・祝宴〜THE LONGEST DAY〜
ホテルに戻ってきた。 「おめでとうございます!」 鼻たーかだっかー♪ 満足に体は動かないとはいえ、ともかく戻ってきた。 そう、今宵は本日のメインイベントだ。 …と昨日のうちに決めておいたとはいえ、実を言うと昨日まで、いや、今朝までの僕はまったく自信がなかった。 一度横になったら二度と起き上がれないんじゃなかろうか…という一抹の不安があったのだ。現に今も風呂から上がってベッドに倒れこんだのである。 マラソン自体にはかすかな影響しか与えなかったかもしれないけど、ここに至るまでの鍛錬の日々は、けっして無駄ではなかったのだなぁ……。 そうやってホテルの部屋でゆっくり過ごすうちに、今宵に対する不安は完全に払拭されていった。 またしても島P夫人カナエ嬢に送ってもらい、彼女はいったん家に戻るので先に我々夫婦だけ店に入ると、案の定まだ誰もいない。 ほんとにもう、熱い男・マサカッちゃんがいなければ、僕の完走はなかったかもしれないのだ。 そんなこんなで祝杯!! ……とやっているところへ島P一家登場!! そうこうするうちに、えび屋−Mさんが大量の車えびを抱えてご来店!! 車えび美味い!! その後さらに、昨年華燭の典を挙げられたばかりの石垣在サンシャイン関係者(水納島来島歴あり)が訪れ、さらにさらに、前述のTさんも本当に駆けつけてくれ、座は大いに賑わったのだった。 顔がでかい僕が手前に来ると、 この座敷がまるで12畳くらいあるように見える……。 撮影:あだん亭ママ 「ダイビングクラブ&琉大OBって、石垣にたくさんいるんだねぇ!」 驚くYさん。 もともとこのあだん亭はYさん夫妻とマサカッちゃん夫妻の4名で予約を入れていた店である。 かといってサンシャインチームとダイビングクラブOBチームでくっきり色分けされているかというとそうでもなく、サンシャインの旗頭Yさんは、実は当サイト掲示板でお馴染みの環礁沿いの住人さん(我々や島P、そしてえび屋−Mさんの先輩)のお友だちで、すでにえび屋−Mさんは環礁沿いの住人さんともどもYさん亭にお邪魔したことがあるのだそうだ。 また、Yさんのバドミントンの履歴を知った島P夫人カナエ嬢は、さっそく熱烈なラブコール攻撃。 「もう肩が痛くて上がんなくなってから全然やってないよぉ」 そんなYさんの謙遜などには聞く耳持たず、早くも一週間の活動予定を伝えていた。 おお、そういえば。 そういう意味ではまったく面識がない者同士のはずの島Pとマサカッちゃんが……というか、もっぱら島Pが一人トークのような状況だったのだが……なにやら大いに盛り上がっていた。 この島P、学生時代はそれほど酒に強いわけではなかった。 ところが、職場で募るストレスがアルコール分解酵素を培養しまくったのだろうか。社会に出て、それも石垣に越してきてからというもの、飲めば飲むほどに、話し出したら止まらないエンドレスリピートトーカー男になった。 そのためにぎやかな宴席になると、夜が更け、さらに空が白々と明るくなり始めるまでの間に、少なくとも7回くらいは彼の同じ話を聞く破目になるという。 ひょっとして、キノッピー? そういえば以前水納島に遊びに来た際も、ゲストのDucky隊長相手に延々と話し倒していたっけ。 そんな彼も四十を過ぎ、二人の娘もすっかり大きくなった安心感からだろうか、相変わらず飲めば爆裂トーク男になることには変わりはないものの、リピート無しですぐエンド男になったらしい。 この日の彼は、初対面のマサカッちゃんをいつの間にか「鈴P」呼ばわりしていて(彼の苗字は鈴木という)、おお、さすが爆裂トーク男、今宵もこの調子で突っ走るのか?? 後刻、じゃあ2次会へ行きましょう!!というとき、彼は消火栓の標識とお友達になっていたのだった。 ZZZZ………。撮影:オタマサ かくいう僕も、まるで盛岡のわんこ蕎麦のような手際の良さで注いでくださるTさんの洗礼を24年ぶりに受け続け、いつの間にかたらふく飲んでしまっていた。 こんな楽しい宴席で、にぎやかなお酒が大好きなえび屋−Mさんが黙っているはずはない。 消火栓の標識とお友達になっている島Pはさすがにダウンかな、と思ったらしっかりがんばっている。 そんなこんなで、ショバを変えて二次会に突入。 ところが僕の隣には、「元気がなくなってジョークが言えなくなった若い頃の仲田幸子」のようなオバチャマが座るや否や、静かに「いただきまーす」などと自分で酒を作って飲んでいるではないか。 でもこの日はホントに久しぶりに会う人たちばかりだったので、ついつい元気のない仲田幸子に背を向けてみんなと話を弾ませていると、背後からその仲田幸子が湿っぽく言うのである。 「…なんか、みんなで盛り上がって誰も相手してくれないからつまんなーい」 危うく絞め殺してしまうところでした……。 まぁしかし、これから日本が迎える超高齢化社会を鑑みれば、いつ自分がそういう立場になるかわかったものではない。 最近はこういう飲み屋さんも不況のせいで相当苦しいらしく、景気のいい頃だったら客にドンどこ酒を飲ませていればそれでよかった。 たしかにここでも、まさか食せるとは思わなかったヒージャー汁をはじめ、居酒屋と変わらぬグレードの品々をいただいてしまった。 いやあ、それにしても。 「フルマラソン走ったのに、二人とも元気だね!」 2次会がひらけた午前2時頃、これまた人一倍元気なカナエ嬢が言う。 そうそう、今さら言うけど、実はこの日はうちの奥さんの誕生日だった。 |