19・車えびのふるさと
石垣島の科学特捜隊基地をあとにした我々は、これまた島P夫妻御用達というパン屋さんに向かった。 その名を、「トミーのパン」という。 地元の人にも観光客にもけっこう有名なお店だそうで、うちの奥さんですらその存在を知っていた。今回是非味してみたいと思っていたそうだ。 そんなウワサのパン屋さん、いったいどこにあるのだろう。 その看板が示す先は、人家の見当たらない海岸べりへと続く下り坂。 まさかぁと思っていたら………本当にあった。 これ、写真じゃわからないけど、すぐ背後が海で、それも崖になっているのだ。 というか、ブラック・ジャックもそうであるように、こういうところでお店が成り立つなんてのは、よほどの口コミがなければありえない。 実際この日も、閉まっちゃってたら大変とばかり、来店する旨をカナエ嬢が事前に電話していたほどだ。そうしておかないと、その日焼いたパンが売り切れると同時にすぐ閉まってしまうのだとか。 以前はもう少し家が集まっている集落内に店舗があったそうなんだけど、なにがどうしてどうなったのか、今はここにある。 オイスィーッ!! 値段もブラック・ジャックなみだったらどうしよう…というのは杞憂だった。 ずっと空は鉛色のまま、ときおり雨がぱらつくお天気。 カンムリワシの幼鳥だ! 今日もまたこうして目にできたわけだから、少ない少ないというほどには少なくないのかもしれない。 島P夫妻にとってはカンムリベラよりも観る機会があるカンムリワシながら、本島地方に暮らす我々が普段この鳥を目にする機会はない。
成鳥と違い幼鳥はまだ警戒心が薄いらしく、電線のすぐ下から見上げても逃げようとしない。 ああ、その羽根を広げた一瞬を撮りたかったのにぃ!! でもなんで突然逃げたんだろう?? …と思ったら、反対側でうちの奥さんが意味もなく不用意に動いていたのだった。 さてさて。 撮影:島P えび屋−Mさんの車えび養殖場!! 8ヘクタールにも及ぶ広大なこの養殖池で、たくさんの車えびたちが今や遅しと出番を待っている。昨夜ご馳走になったエビちゃんたちも、その日の朝まではここで元気に暮らしていたのだ。 かつて僕は、大学卒業後の最初の2ヶ月ほど、このエポックの本店である久米島の養殖場で、えび屋−Mさんのお世話になりながらアルバイトをさせてもらった。 右も左もわからず何も使えない学生に毛が生えたようなものだったから、相当ご迷惑をおかけしたことは間違いないものの、貴重な経験をたくさんさせていただいた。 出荷のために早朝水揚げしたエビちゃんたちは、いったん施設内の生簀に入れてから仕分け作業をする。 養殖場社員の方々は、交代制で宿直室に寝泊りすることになっていて、その宿直室に僕は寝泊りさせてもらっていた。 その後ほどなく上京し、池袋の西武百貨店の地下食品売り場街にて、車えびちゃんと久々の対面をした。 モノを知らぬということほど恐ろしいものはない……。 この日特にお邪魔する予定でいたわけではないので、えび屋−Mさんにはまったくアポなしだった。 あと一歩到着が遅かったら、すれ違いだったのだ。 事務所にも通していただいて、そこにいらっしゃる奥様にもお会いできた。一度水納島に遊びに来てくださって以来だから、8、9年ぶりだ。 さんざんぱらお世話になっておいて、前夜もすっかりえび屋−Mさんにご馳走になった我々は、初めてこうしてお邪魔させていただいたにもかかわらず……まったく手ぶらで来ている。 このあといよいよ、今回のマラソン以外の主目的ともいうべき、Yさん邸訪問が待っている! |