25・アグリジェントへ!
明けて迎えた3月3日雛祭り。 昨日もまた快晴だったから、きっと今朝も…… わぉ………。 やや雲に隠れていた昨日と違い、正真正銘のイオニア海からの日の出…………。 ナニゴトの おわしますかは 知らねども この風景を見てしまっては、古代人ならずとも神々の息吹を感じずにはいられない。 そしてそのご来光に照らし出されて……… エトナ山の頂はほんのりピンクに染まっていた。 このエトナ山の頂付近に、靄状の雲が見えた。どうせだったら無いほうが写真的にはいいなぁと思ってしばらく待っていたものの、時間が経っても一向に動かない。 その正体は後刻判明する。 お日様が昇るにつれて、スローモーションで色が変わっていくエトナ山に見とれることしばし……。 このまま、時間の経過につれて変化していく景色を楽しみたかったものの、あまりの美しさを独り占めするのも申し訳ないから、部屋に戻ってうちの奥さんに報告。 ……って、たしかに準備は大切だけど、朝飯に時間通りいくくらいなら、この景色を優先すべきだと思うんですけど……。 しかしそれは、例によって朝から酒を飲んでいる父ちゃんも同じで、二人してせっせと片付け。 すっかり日が昇ってから観に行ったうちの奥さんは、日の出がさぞかし美しかったろうということにようやく気がついた。 「片付けを後からやればよかった……」 でしょう? そしてタオルミーナの最後の朝食。 なんと昨夜、我々が食べている同じ時間にダ・ニーノにいたらしい。 「いい店だったわね♪」 そうか、やっぱいい店だったのか。 間違いなくいえるのは、さほど多くはない宿泊客が同じ店で出会うくらい、この時期に開いている店が少ないってことだ。 この朝食で、僕は初めてエスプレッソを頼んだ。 このエスプレッソが………… 小さッ!! 普段コーヒーには砂糖を入れたりしないけど、こればっかりは、砂糖を入れなきゃ炭を飲んでいるようなものに思えたので、砂糖を入れてみると…… 完全無欠のドルチェに変身!! さて。 アグリジェント!! 鉄道や長距離バスでの移動ってのも楽しそうではあったものの、公共交通機関がいつなんどきストになるかわからないイタリア。 そんなわけで、これまたヒロセさんのシチリアクラブに、タオルミーナからアグリジェント観光つきパレルモ行きの、専用車で行くロングトランスファーをお願いしてあった。 ただし、前2日間のようにヒロセさんは同行しない。英語は話せるけど日本語は話せないシチリア人運転手つきの専用車だ。 ……という段になって、朝のワインが効いてきた父ちゃん。 だから朝飲むなって言っているのに………!! そうこうするうちに、時刻どおりにドライバー到着。 Arrivederci,Taormina!! レナートが我々と共に言ってくれた。 さあ、アウトストラーダをぶっ飛ばして一路アグリジェントへ!! 初日カターニア空港からタオルミーナへとやってきたときと同じ道。 そして…… あ、あれは!! 「Fumo.」 レナートが教えてくれた。 生きている火山、エトナ………。 昨日はあそこの麓にいたんだよなぁ……。 こんなちっぽけな写真の1枚や2枚ではとうてい伝えられないものの、正直、ゴッドファーザーのロケ地をめぐっていたときよりも、よほどあのゴッドファーザーの名曲が似合う景色の連続なのだ。 途中途中には羊の群れなども見られ、絵に描いたようなシチリアの風景が広がっていた。 とてもじゃないけど寝ている場合ではない。 当然ながら助手席には僕が座っていた。 羊を指差し、「Pecora.」と教えてくれるレナート。 一面に広がる緑の草原には、2種類あることも教えてくれた。 小麦!! 古の昔から、地中海世界の穀倉地帯として君臨してきたシチリア。とりわけ小麦なんて、この世界の生活に欠かせない農作物だ。 牧草地を彩る黄色い花々がまた美しい。 色こそ違え、あたり一面ビッシリと花が覆い尽くす風情は、かつて日本の春先の田園風景では当たり前だった、レンゲの花畑のようにも見えた(田んぼのレンゲは人が撒いていたものだけどね)。 調べてみると、南アフリカ原産ながらすでに日本にも帰化しているらしく、曇りの日には閉じて、晴れている時には花開く、ということも有名なようだ。 いやあ………美しい。 「水彩画のようだなぁ…」 なんて感嘆の声をあげていたんだけど、30分ほどすると飽きちゃったらしい………。 ま、寝てたほうがこの後のためにはなるだろう。 この瑞々しい風景は、真夏の3ヶ月ほどの間はまったく異なる姿になるという。 レナートのベンツワゴンはひた走る。 面白いことに、エンナの街の前までは、アランチャ、レモーネ、オリーバだった沿道の果樹の様相が、エンナを過ぎると徐々に変わってきた。 アーモンド!! 「 Si,si.Mandorra.」 あれも? 桃か! そっくり。 「ではあれはアーモンド?桃?どっちでしょう?」 「桃だ!」 あ……… 沿道ではこのほか、カカシも見受けられた。 そんなこんなで、まったく飽きることなく経過した2時間30分の道のりは、そろそろ終点に近づいてきた。 やたらとにぎやかで混雑している街(アグリジェントの街)を海側に抜けると、そこは……………… 神殿の谷!! |