4・1月28日

和食締め

 今回の旅行は、ここ数年の旅行と比べて大きく違うことがひとつある。
 それは、那覇を発ってから目的地に着くまで、寄り道をしないということ。
 つらつらと並べられたこれまでの旅行記を読み返すまでもなく、ここ数年は、まず埼玉の実家に寄るっていうのが定番だった。そのあと都内もしくはその近辺で友人知人と飲むという日程。
 いわば連日酒びたりの出発前だった。

 ところが今回は、関空発着ということもあって行きには寄り道は一切せず、まっしぐらにただひたすらに目的地に向かう。肝臓がへばっているヒマなどどこにもない。

 ……はずだったのに。
 旅行出発……というか、島を出るのは1月28日(土)。その週に、水納島のオフシーズン中最大のイベント、水納小中学校の学習発表会があった。
 その練習と称して飲む、うちの奥さんの誕生祝ということで飲む、当日の反省会ってことで飲む、翌日は前夜祭(何の?)ってことで飲む、飲む飲む飲む…。
 ついにうちの奥さんの胃腸は旅行出発前に機能不全を起こし、最後の飲み会は欠席したほどだった。

 そして。
 島を出る28日の晩は、膝十字固めの傷がいまだ癒えないナチュラル院長ハッスル2氏が、僕たちにご馳走してくれるというのだ。
 開業以来、クロワッサンから送り出された患者さんは数えること5000人。そのバックマージンがついに美味しい美味しいお寿司となって我々のフトコロに…じゃなかった、胃袋に飛び込んでくるのである。
 うちの奥さんが最後の飲み会を欠席したのは、なんとしてでもそのお寿司を美味しくいただくために、胃腸を調えようとしていたからにほかならない。

 その28日。
 試合を一週間後に控えた姫を残して旅立つというのが、あまりにも後ろ髪を引かれる思いだったものの、こればっかりはしょうがない。せめてギリギリまで…ってことで、この日の午前中も卓球をした。
 ………って、どちらかというと僕が無理矢理お願いして…って感じなんだけど、ひょっとしたら生きて帰ってこられないかもしれないのだから、悔いを残してはいけない。

 で、その後いよいよ出発という直前、姫が「おばあから」ってことでサーターアンダギーを持ってきてくれた。サーターアンダギーは日持ちする。道中のことを思えば心強い援軍だ。
 ありがとう、姫。
 このアンダギーが、まさかああいうところで活躍することになろうとは……。

 さあ出発。
 我々が旅行に際し島を出るときは、こんな状況になる。

 まるで引越しのような……。
 これで旅行先がダイビングとかだったら、さらに大荷物になっていたところだ。行き先が冬のない軽井沢だからこそこの程度で済んでいるのである。

 渡久地港到着後、例のごとく具志川のながみね動物クリニックへ。
 行きつけの飲み屋ならぬ行きつけの動物病院なので、先生方にもすっかりおなじみのかんぱち君とテンちゃん。しばしの別れも、それほど寂しくはなさそうだった。
 このながみね動物クリニックはジャスコの裏にある。小腹が空いたのでついでにジャスコにより、こじゃれたカフェで軽く食事を。
 この時も大田胃酸を飲みながら珈琲を飲むうちの奥さん………。

 そこから琉大を目指す。
 今回は2週間近くなるので、空港周辺の駐車場代金と琉大からのタクシーの往復を考え合わせると、タクシー代のほうが遥かに安くあがるのだ。
 琉大構内にあるクロワッサン専用駐車場に車を停め、北口にあるタクシー乗り場を目指して歩いていると、通りかかったバイクの兄ちゃんが、振り返りながらなにやら不思議そうに僕たちを見ていた。
 なんだ?そんなに俺らはおかしいカッコしているか?
 と思いつつその兄ちゃんを眺め返すと……

 おお、なんとショッカー3号じゃないか!!
 昨夏クロワッサンでドレイをしていた青年である。
 ここで会ったが百年目。
 「来週卓球の試合があるから、応援に行くように!」
 3号から1号へと伝言は伝わった。

 タクシーに乗り、一路浮島通りの安宿へ。

 そしていよいよ、今日のメインイベント。
 夜9時まで仕事の院長を待ち、目指すは寿司屋かわじや。ハッスル2院長のナチュラルの通りにある。
 そりゃ沖縄だから、築地で食べられるようなネタが何もかもそろい踏みというわけにはいかない。でも、これからしばらく和食を断つことになる我々にとっては、ああ、もうこれで死んでも悔いはない……ってくらいにヨロコビのメニューのオンパレード。
 それをご馳走してくれるっていうのだから、いやあ、生きてて良かった。
 ハッスル2院長、ありがとう!

 29日午後4時発のチケットが入手できていたら、この日この場でこのヨロコビはなかったわけだから、これも神の思し召し、いやはや、神様仏様ハッスル2さま………。
 これを塞翁が馬といわずになんと言おう。

 その後例によって梯子をし、最後はこのところお気に入りのラーメン屋へ。
 時刻はすでに午前4時。
 大田胃酸の効果が抜群だったのか、うちの奥さんもここにきて絶好調。結局今回も前日に暴飲暴食状態になってしまったのだった。