この日は朝10時にチェックアウトしなければならない。 そんな我々の事情を慮ってくれたかのように、宿への帰り道の途中、漁港から程近いところに、「道の駅 舟屋の里公園」に続く階段があった。 近頃流行りのいわゆる道の駅ながら、小高い丘の上にある。なのでそこから伊根湾を眺めると…… おぉ、ベルベデーレ♪ これで晴れていたら最高の眺めだろうなぁ。 手前の太平荘側は見えないものの、ほぼこれが伊根湾の全貌だ。 その方面をグーンとクローズアップしてみよう。 ここにもやはり舟がたくさん。 ● ● ● ● ● この道の駅の土産物屋で鯖のへしこを買って、いったん宿に戻ってチェックアウト。 バス停まで車で送りましょうか、と女将さんはおっしゃってくださったものの、やはり見納めがてらテクテク歩き回ることにした。けっこう重い荷物を背負いつつ……。 宿からちょっと行ったところにこの後まもなく工事現場になるところがあって、車の通行規制をしている。そこに警備員の方が一人いらっしゃった。 正直に沖縄からです、と応えると、 「沖縄から!?そらうれしいなぁ!!」 と喜んでくださった。 伊根湾をグルリと歩ける道がある。 普段はここをバスが通っているのだ。 その先にすぐ海が見えるというのは、何度見てもなんだか不思議的光景だ。 海に面していた家は、かつてはすべて人が住まう舟屋だったそうな。しかしそれは少しずつ変化してきている。 現役の舟の艇庫として利用されているものの、建物自体はとうていヒトが住めないほど今にも崩壊しそうに傷んでいるものがある一方で、建物には今もなお人が暮らしているけれど、 艇庫が車庫になっている家もある。 どこであれ、時代とともに町並みが移ろい変わっていくのは避けられない。 これはこの舟屋群が景観保全区域であるからこそとはいえ、この伊根の舟屋に住まう人々は、なにも行政から景観を保全せよと言われるまでもなく、ごくごく普通に昔ながらのここでの暮らしを、現代風にアレンジしつつ受け入れているように見えた。 そんな舟屋群を守る心強い存在がこれだ。 消火栓。 舟屋群を火の手から守る心強い味方は、消火栓だけではなかった。 それがまさか… 消防船だっただなんて!! 伊根町消防団の船……いや、舟、あおしま号だ。 うーん、この舟が活躍しているところを見てみたい! …って、ダメでしょ火事になっちゃ。 そうこうするうちに、雲行きがだんだん怪しくなってきた。 そこで、この伊根の舟屋群を見納めるべく、日出地区を目指してテケテケ歩くことにした。 そこに、伊根湾めぐり遊覧船乗り場があるのだ。 本部町のマリンピアザで運航している大型グラスボートほどの大きさの舟で、25分ほどかけて伊根湾をめぐり、海から舟屋群を眺める、という趣向の遊覧船である。 でも小回りが利かなそうな舟では舟屋のそばまでは寄れないだろうし、どうせだったら多少割高でも漁師さんが個人で営業している、漁船で巡る伊根湾ツアーを選びたい。 伊根湾から少しはみ出た先にあるこの日出地区も舟屋群だった。 ここでなんでクジラ?? またまたぁ、海だからクジラだなんて、発想が安易にもほどがある………などとなかばバカにしつつ、ひょっとしてと思い後日京都府のサイトで調べてみると、なんとなんと!! 「伊根湾や海洋センターがある栗田湾では、昔クジラ漁が行われていました。 地区の古文書「鯨永代帳」によると、江戸時代初期の明暦2年(1656年)から大正2年(1913年)までの257年間に、ザトウクジラ、ナガスクジラ、セミクジラ計355頭を捕獲したことが記録されています。 また、伊根湾に浮かぶ青島には鯨の墓も残されています。」 そこにはビックリ仰天の歴史的真実が。 クジラって日本海にもいたのね。 そういえば、後日訪れた京都の錦市場では、当たり前のように鯨肉各部位が売られていた。 自らの無知を棚に上げ、歴史と伝統に基づいたクジラのオブジェをバカにしてしまってすみません。 券売所兼土産物売り場の建物の中では、森進一が「襟裳岬」を熱唱していた。 ここでなんで襟裳岬?? またまた知られざる歴史が??? ……いや、単に有線放送です。 なんともタイミングがよいことに、ここにたどり着いてから雨が本気で降り始めてきた。 ……雨に打たれながらの遊覧船ってのもどうなのよ、という話もあるけど。 そうこうするうちに、30分ごとに運航している「かもめ5号」が桟橋に到着。 客は、我々のほかに一家族だけ。 …まぁ、こんな冬の雨の日に遊覧船に乗ろうっていうもの好きもそうそういないか。 さあて、出港だ。 そして舟屋群も、こんな感じで見ることができる。 また、海から眺めるわけだから、こういう写真も撮れたりする。 この舟屋群で小舟一隻あれば、近所の家まで舟でお出掛けできるじゃないか。 そしてそして、雨降る中でのこの伊根湾めぐり遊覧船、ここでのベストショットはこれだ!! カモメのジョナサン、エサをゲットする瞬間!! <お前ら、舟屋群を見ろよッ!! かっぱえびせんなんぞを鳥に与えると、Ducky隊長に怒られてしまいそうだけど、券売所や舟のデッキで「カモメのエサ」として売られているんだからしょうがないじゃん。 <いや、そういうモンダイじゃなくて……。 でまた、カモメたちは遊覧船の人間がエサをくれると知っているものだから、出港当初からカモメがわんさか寄ってくるのだ。 なんだかとっても重要なことをいろいろ見逃したり聞き逃したりしているような気がするものの、最後にカモメを……いや、舟屋群を見納めて、我々はこのあと、再びバスに乗る。 |