蔵王に行きたい! …といううちの奥さんの目的は、もちろんスキーでもスノボーでもなかった。 樹氷!! サントリーの四角いボトルの焼酎のことではない。 樹氷といえば四方八方に広がる枝に氷が張り付いたガラス細工のようなあれのこと? ずっとそう信じて今日まで生きてきたところ、あれは正しくは「霧氷」というものらしい。 蔵王に行けばわかる。 ではどうやって見ればいいんだろう。 しかしさらに調べてみると、こんなツアーが開催されていることがわかった。 輪かんじきトレッキングツアー。 蔵王山岳インストラクターに引率されつつ、昔ながらの輪かんじきを履いて、樹氷の合間を歩いて巡る冬のトレッキング。 ひと目見るなり、 「これやりたいッ!!」 そううちの奥さんが叫んだのは言うまでもない。 そのツアーは蔵王観光協会を通して予約できるようになっていて、当日まで知らなかった仙台のビジネスホテルの場所とは逆に、なににもまして精力的に手配をするオタマサ。 輪かんじきトレッキングツアーは、全行程5時間ほどだそうで、とりあえずの目安として「中級コース」と紹介されていた。 四十を越えた我々ながら、中級も何も、まったく経験がない我々の「級」ってどんな程度なんだろう??? その「中級コース」というのがいささかプレッシャーだったので、島にいる間に対策をしていた。
この足首あたりにある赤っぽいもの、これは本来ドライスーツを着ている時のための、足首用ウェイト。 これを足首につけて歩くのだ。 これはひょっとしてかんじきトレッキングのトレーニングになるかも?? そのためこの冬は、このウェイトを着けてただ歩くだけではなく、わざと岩場などの悪路を歩いてみたりしていたのであった。 それが功を奏するかどうかは甚だ未知数ながら、ともかく雪の中でワシワシと5時間も歩くとなれば、そこらを歩く格好でいいはずはない。実際、理想的な格好というものがトレッキングツアー案内ページで紹介されていた。 とはいえ沖縄で暮らす我々が、たった1日の雪山トレッキングのために買い揃えるにはいずれもいささかエクスペンシブ。 問い合わせてみると、これがちゃんとある。 これで装備の心配はなくなった。 が。 天気予報の按配が……。 この冬は全国いたるところで猛烈な雪になる日が多く、特に太平洋沿岸を低気圧が発達しながら通過していくと、東北地方は激しい気象になってしまう。 だったら日を延ばせばいいじゃん…って話だけど、あいにくこのツアーは山岳インストラクターさんの誰かを都合して開催されるシステムになっているため、希望日の3日以前に申し込まなくてはならない。 ってことは、蔵王最大の目的であったかんじきトレッキングで樹氷!は、悪天候のために儚く夢と消えてしまうのだろうか。 前日、つまり蔵王に到着した日、レンタルウェアーのサイズ合わせのためにレンタル用品店に行く必要があったものの、その前にホントに開催されるかどうかを、バスターミナルの隣にある観光協会で訊ねてみた。 明日って開催されるんでしょうか?? 心はもはや、初めての体験ダイビングを明日に控えているのに天気予報は「雨」になってしまったゲストの心境だ。 「うーん、たぶん大丈夫と思いますけどねぇ………」 天気予報を把握しているおねーさんが言う。 「ロープウェーが動くかぎり、ツアーは中止にならないですよ」 おお、まるで水納丸が運航するかぎり、どんなに大波が来ていようとスノーケリングツアーを開催する日帰り業者さんみたい!! それもそのはず。 これじゃあきっと楽しめないだろうから…と、呆気なく中止にしてしまうクロワッサンとは違うのだった。 開催されそうだということなので、一応翌朝のため、観光協会御用達レンタル用品店まで足を運んでみた。 スキー場の経験は無いに等しいのでよく知らないものの、こういう場所のこういうレンタル受付窓口って、若いお兄さんやお姉さんがいるものだとばかり思っていた。 ところがこの森スポーツさんときたら、窓口には故・ヒデオさんを彷彿させるオトーサンと、これまた同じく年配のマメに動くオトーサンの2人。 懐かしかったので、帰りに思わず一緒に写ってもらった。 サイズ合わせに来た時が面白かったのなんの。 でも我々はその必要があったので、その旨ヒデオさん(勝手に命名)に告げた。 「ん?それでダイジョーブ!!」 たしかに我々の上着、特に僕の上着は極北の地でマイナス32度にも耐えたことがある。 「まさか!!そんな格好だったら連れてってもらえないよ!!」 いや、だからレンタルしに来てるんですってば……。 靴のサイズ合わせも面白かった。 しかし履いてみると、思いのほか窮屈。これで5時間過ごすのはつらそうだ。 なので換えてもらうことにした。 28.5センチ。 いきなり2センチアップっすか??? 靴ひとつでてんやわんやしつつ、最終的に27センチに落ち着いた。 いやあ、森スポーツ、面白い! 5時間の行程中、ほどよい場所で休憩して昼食をとるとのことで、それ用に各自軽食と飲み物を用意する必要があった。 さあ、これで準備は整った。 ………あとは天気の神様に祈るのみ。 |