7・かすうどん
今オフのお出かけが、ついに大阪への帰省のみになることが決まった瞬間から、大阪でいかに楽しく過ごすべきかという検討を始めた僕だった。 そんなおりたまたま手にしたのが、3年前の旅雑誌である。 今やすっかり女性向けのミーハー誌になってしまった「旅」という雑誌は、その昔は松本清張が名著「点と線」を連載していたこともある実に硬派な旅行雑誌で、版元が交通公社から新潮社に移って以降、ビジュアル重視の体裁に変わった。 旅行といえば今の世の中グルメネタと切っても切り離せない関係だから、その雑誌にもその手の連載がいくつかあった。TVタックルでもおなじみのコラムニスト勝谷誠彦が、地麺’ Sウォーカーという、日本全国津々浦々のその地ならではの麺類を探訪する連載を書いていて、そこで実に魅惑的な大阪ならではの麺紹介されていた。それが「かすうどん」だ。 大阪出身ではあるけれど、かすうどんなんて、僕は聞いたことすらなかった。 というわけで!! どうです、赤い彗星にぴったりの場所でしょ??<どこが!? 前述の旅行雑誌を見て、食べたいものの筆頭に選んだのがこのかすうどんなのである。 と、途方にくれていたときに、降って湧いた赤い彗星。 そんなこととはつゆ知らず、メールのやり取りをしていた際に、どこか行きたいところはありまへんか?と訊ねてくださった芳澤@茨木さんは運の尽き。大阪のオッサン歴50年の彼が、大阪を代表するかすうどんを知らないはずはない。以前の職場の食堂では普通にメニューにあったほどだそうで、それこそアホほど食べたことがある食べ物なのだ。 だから、僕たちが大阪で食べてみたいものがかすうどんだと聞いた彼が、 はぁ??? そうおっしゃるのも無理はなかった。 そうか!! かすうどんって、つまりは河内の国の食べ物なのである。 そんな藤井寺のかすうどん屋さんへの道のりなど我々が詳しく知っていようはずはないので、このお店のサイトから超簡単な地図をプリントアウトして持ってきていたのだが、時代はそんなアナログ作業などをまったく必要とはしていなかった。 そうしてカーナビの指示に従いながら車が進んでいくと………… 満員だった。 そこで、僕たちはついにかすうどんを頼んだ。 さあみなさん、これがかすうどんだ!! かすうどんを知らない方がその名を聞いて想像するのは、天かすが乗ったうどんではなかろうか。 あえて言おう!!「かす」であると!! ここまでの流れで、このセリフが必ず出てくると思ったあなたはニュータイプ(笑)。 我々がいるこの加寿屋さんは、このかすをいろんな店に卸している大手業者グローバルキッチンという店の直営店なので、一杯のかすうどんに使用しているかすの量が圧倒的に多いという。 まいうーッ!! ありとあらゆる出汁が染み出たスープはもちろんのこと、かす自体のえもいわれぬ妙味!!そして食感!!さらに、品よく乗っかっているおぼろ昆布とうどんが絡み合い、口の中ではそれぞれの味がサイコフレームとなって、ニュータイプの共振を始める………。 これは…………美味しい。 このお店が昨年までは夜だけオープンしている店だったというのもうなづける。一杯飲んだあとの締めとして、これ以上のモノが他にあろうか。 こんなに堪能できて、一杯たったの500円。 我々同様初体験だったK子さんもいたくお気に入りの様子で、ただ一人かすうどんの1から100までご存知の芳澤@茨木さんも、久しぶりのかすうどんに満足されていたようだった。 今回の大阪行にあたり、かすうどんを食べよう!という大きな目的は、こうして無事にはたすことができた。 これでさあうちの実家まで……というのではあまりにも名残惜しいので、次こそ赤い彗星にふさわしい場所に行ってみることにした。道などまったくわからないけれど、そこはハイテクカーナビのこと、店名を入力するだけでいともたやすく目的地へのルートが判明した。 さあ、赤い彗星にふさわしい場所とは??
こんぱまる大阪店!! ああ、しまった!! 超シュールだったのになぁ……。 驚いたことに、この日のこんぱまるには、僕らですら驚くとんでもないクリーチャーが紛れ込んでいた。 大阪のオバハンである。 いや、ステレオタイプで言われるような大阪のオバハンとは少し違うか…。 どうやらここにいるベニコンゴウインコをお買い上げらしく、しばらくは店にお預かり状態であるようだ。 K子さんはうちの奥さんと一緒にさまざまな鳥さんたちを興味深そうにご覧になっていたのだけれど、芳澤@茨木さんにとっては、このオバハンが最も印象に残った生物だったようだ。 程度の差こそあれ、ペットに接する姿ってのはこんなものなんだよなぁ、普通。 芳澤@茨木さんだって、ひょっとするとご自宅ではネコちゃんたち相手に究極のネコ親父化されているかもしれないし………(笑)。 というわけで、我々のワガママに100パーセント付き合ってくださったご夫妻は、最後はとうとううちの実家まで送ってくださった。 ……のだが。 送ってくださっているとういうのに、その最終目的地がわからない。住所もくわしくは覚えていないから(部屋番号すら!!)、さすがのハイテクカーナビもお手上げだ。 なんてことだ、かすうどん屋には行けても実家にはたどり着けないなんて……。 そんな次第なので、やむなく中途半端な場所に車を停めてもらい、あとは目と鼻の先であることは間違いない実家に電話でもして確かめてみることにした。ここまでくれば、さすがにあとはなんとでもなるだろう。 ここまでしていただいて、御礼のひとつもできず申し訳ない……… すると、芳澤@茨木さんが我が意を得たりとばかりにマジックを差し出した。 「今日のギャラ代わりに、記念にサインをお願いします!!」 へ? 「もちろん、エボ]に決まってますがな!!ここにお願いします!!」 と彼が指し示したのは、あろうことか、真新しい車の、ピカピカのサンバイザー。 こ……こんなところにサインなんかしていいんですか?? 「これで世界に1台だけのエボになります!」 もともと変わっている人とは思っていたけれど……………。 かくなるうえは、ドドンとサインを書いてしまおう!! 撮影:芳澤@茨木さん どうです、赤い彗星にふさわしいでしょ?? 「なんでダイビングサービスのオーナーのサインがザクやねん!!」 車のオーナーにもっともな突っ込みを入れられたのはいうまでもない………。 私の手向けだ。このサインと仲良く暮らすがいい。 とにもかくにも、お忙しい日々のつかの間の休日にもかかわらず、芳澤@茨木さん、K子さん、ありがとうございました!! |