全長 15cm
水納島で観られるビジュアル系アイゴトリオたちが普段はペアで暮らしているのとは違って、いわゆる「アイゴ」のイメージどおりの地味地味ジミーなアミアイゴは、ハナアイゴ同様ペアで行動する習慣がない。
たまにペアであるかのように2匹でいることはあっても……
それはたまたま2匹でいるだけで、この先ずっと2匹が一緒ということはない。
といっても一人きりでいるのが好きなわけじゃないらしく、同じ種類が何匹も集まって行動するほうが性に合っているようだ。
ただし彼らアミアイゴは、水納島の場合通常のボートダイビングで出会う機会はまずない。
というのも、アミアイゴはリーフの内側の浅い環境が大好きで、そこで太陽光を浴びてスクスク育つ藻を食べているのだ。
そのためビーチで海水浴をしているお客さんたちのほうが、ダイバーよりもよほどアミアイゴと出会う機会は多い。
多いけど、なにぶん地味地味ジミーなアミアイゴのこと、同じアイゴ類ならアミアイゴに比べてハナアイゴのほうがよほど目立つ存在だし、他にルリスズメダイやミスジリュウキュウスズメダイ、それに各種チョウチョウウオにツノダシに……とカラフルな魚たちがたくさんいるなかで、わざわざこのアミアイゴに注目しているヒトはかなりの物好きかよほどのヘンタイと思われる。
そんな目立たず騒がずアピールせずのアミアイゴたちにも、一生の中でキラリと輝く時代がある。
そう、幼魚の頃だ。
沖縄の食文化のなかでも「観光客にその名が知られている度」では必ず上位に位置するであろうスクガラスのスクとは、アミアイゴのチビターレたちのことなのだ(他の種類も混じっているらしいけど)。
浮遊生活を終えて沿岸にたどり着いたチビターレたちは、とんでもなく大集団になっている。
それも、地味なオトナからは想像もできない金色に輝くタタリ神のようなこの群れ。
本気で群れているスクの群れは上の写真どころではなく、アフリカを席捲するバッタの大群級になる。
それが毎月のように訪れてくれればいいのだけれど、一年のうちでも夏の新月の限られた短期間にしか観られず、なおかつグズグズしていると藻を食べ始めて味が変わってしまう。
なので海に生きているヒトたちは、ひと目スクの群れを確認しようものなら、すべての仕事を忘れてスク漁に夢中になる。
塩漬けにされてスクガラスとなった小さなチビチビ稚魚たちは瓶詰めにされて売られていて、島豆腐の上にそれを数匹載せたスク豆腐なんてものを肴に泡盛を飲むのもオツなもの。
アミアイゴなんて観たことな〜い!なんて言っているヒトの中には、スクガラス大好き♪と言いつつすでに何匹も召し上がったことがある酒飲みが多いに違いない。
もっとも、近年は県産のスクでは需要に追い付かず、フィリピンから輸入したもの(アイゴの稚魚か?)が原料の大半(ウソかマコトか90%!)を占めているそうな。
ま、近頃のスーパーで売られているグルクンといえばたいていベトナム産なのだから、スクだって輸入に頼るようになっていて当然といえば当然か…。
ちなみに、水産資源としての黄金期を早々に終えたフツーのアミアイゴチビターレは、↓こんな感じ。
ビン詰めにされる危機を乗り越え、他の魚たちに捕食されるピンチも切り抜け、オトナとそっくりな色柄になったチビたちは、秋頃になるとリーフの中でたくさん観られるようになる。