全長 12cm
このハゼは、スミゾメハナハゼとほぼ同じ環境で観られる。
ただし水納島の場合スミゾメハナハゼに比べ個体数が圧倒的に少ないため、出会える機会は少ない。
そのため水納島で潜るようになってからしばらくは、遠めにスミゾメハナハゼだと思い込んでいた時期もあった。
ところが尾ビレをよく観ると、上下の端がビヨヨヨ〜ンと伸びているではないか。
ありゃりゃ、これはハナハゼだ。
ハナハゼといえば、伊豆は大瀬崎で潜っていた頃、潜ればしょっちゅう出会っていた。
でもその尾ビレは……
撮影地:西伊豆・大瀬崎@1993年
たしかにヒレの端がビヨヨ〜ンと伸びてはいるんだけど、上下端だけじゃなく、満遍なく伸びているためにクラゲのようになっている。
それに対し、沖縄で観られるハナハゼっぽいこのハゼは、欠損のために1本だけってことはあっても、3本以上あることはまずない。
そこでこのハゼは、ハナハゼの沖縄版地域変異であり、とりあえず同種ってことで……
…と落ち着いたかと思われたのも束の間、いやいややっぱりハナハゼとは別種ですぜ、ということに。
だからといってすぐに和名がついたわけではなく、例によっていわゆるひとつの「クロユリハゼの1種」ということになってしまった。
スミゾメハナハゼの時と同じく、「クロユリハゼの1種」じゃあ味も素っ気もないから、クロワッサンでは長い間、ゲストに案内する際には「沖縄版ハナハゼ」と紹介してきた(それで味と素っ気があるかどうかはともかく)。
そういったコロコロ変わる学会的情報にうんざりし、すっかり距離を置いていたところ(距離が縮まったことは無いんだけど…)、いつの間にやらリュウキュウハナハゼという立派な和名がつけられていたことに気がついたのが、2015年のこと。
というわけなので、それ以前にかつて当店を利用された方で、ログブックに「沖縄版ハナハゼ」と書いてあったら、それはこのハゼのことですから今すぐ書き直してください。
さてそのリュウキュウハナハゼ、青く細長いダートゴビー系らしく、ペアでホバリングしている。
若い頃は、尾ビレのビヨヨ〜ンは短いようだ。
彼らがまったく危険を感じないくらい遠くから観ていると、底から40〜50cmほど上でホバリングしている。
けれどアヤシイヤツ(ワタシのことね)が近づいてくるのを察知すると、だんだん高度を下げ始め、やがていつでも巣穴に逃げ込めるくらいの位置になる。
慎重に近寄ってはいても、たいていの場合このあと片一方(おそらくオス)だけ先に巣穴に逃げ込み、1匹だけ外に残ることになる。
そのため↓このようなフツーにヘナチョコなペア写真を撮るだけでも、なにげに一筋縄ではいかない。
ちなみにリュウキュウハナハゼもいわゆる「居候」を決め込んでいる第1種警戒警報発令係ながら、ヤシャハゼやヒレネジなど、コトブキテッポウエビと同居しているハゼの巣穴に暮らしているのは観たことがない。
ハゼもしくはエビとの相性のモンダイなのだろうか。
写真のペアが暮らしているのは、このハゼの巣穴。
まだ和名が無いダテハゼ属の1種で、このハゼもリュウキュウハナハゼも、おそらく世代交代はしているんだろうけど、もうかれこれ6〜7年ほど同じ場所で共同生活を続けている。
付き合いが長くなると、ハゼ同士お互い気心も知れているのだろうか。
ここはよく訪れる場所なので、警戒心が強いリュウキュウハナハゼも多少はダイバーにも慣れるのだろうか、1匹だけ外に残った子が我慢強いことがある。
すると、ただ逃げ去るだけとは違う様子も見せてくれる。
そのひとつ、ヒレ全開ポーズはなかなかチャンスを活かせないままでいるものの、アクビは……
バッチリ。
せっかくなので(< 何が?)、拡大。
なかなかの波動砲ぶり。
なにぶん警戒心が強いハゼだから、最初から波動砲狙いの勢いで行くと、パルスレーザーくらいの段階で引っ込まれてしまうからご注意を!