全長 80cm(写真は30cmほどのメス)
沖縄ではイラブチャーと総称されることもあるブダイたち。
ひとくちにイラブチャーといってもその味は千差万別…というほど種類はいないから三十差五十別くらい…で、ソテーに適しているもの、から揚げが抜群のもの、そして刺身がジョートーのものなどいろいろある。
もちろん美味しいものほど水産資源的価値は高く、ゲンナーことナンヨウブダイは刺身の美味さときたらキングオブイラブチャー!!
…と長い間思っていたのだけれど。
実はウミンチュのみなさんイチオシ、王の中の王的イラブチャーといえば、このアーガイことヒブダイなのだとか。
そのわりにはあんまり馴染みが無い。
それもそのはず、このヒブダイは他の多くのブダイたちとは違って生息水深が深めで、水納島の砂地のポイントなら20m以深でしか観られない。
おまけに警戒心はブダイ界最強といってよく、ちょこちょこ砂地の根で食事していたりクリーニングしてもらっていたりしても、ダイバーの気配を察するやすぐさま逃げていく。
あまりにもすぐに逃げるから、クリーニングケアを途中で投げ出すわけにはいかないホンソメワケベラが慌ててついていくほど。
ちなみに黄色と青のシマシマが特徴的な色柄はメスで、オスはいかにもブダイっぽい緑色をしているのだけど、このオスがまたメスに輪をかけて警戒心が強く、その存在を認識するようになってから10年は経つというのに、10m以内に近寄らせてもらったことがない。
そのためヒブダイといえば、メスでさえ砂底上遥か向こうにいるブダイ…だったのだけど、あるときなぜか、根に開いたわりと広めの穴倉にご執心だった。
普段の強く高い警戒心からすればあり得ないくらいに近寄らせてくれたのは後にも先にもこのとき限りのこと。
ここにはよほど美味しい御馳走があったに違いない。
そんなわけでお近づきになる機会がほとんどないヒブダイながら、ブダイ類が盛り上がってくる春先には、水深25mほどにある根付近で、砂底から随分上のほうに集まっているヒブダイたちを観た。
そこには大きなオスもいて、多くのメスが集まっているこの感じは、リーフ上やリーフ際でよく観られるブダイたちの産卵前行動に似ている。
ヒブダイたちはこういうところで産卵しているのだろうか。