全長 6cm
魚の名前を覚えることを20年くらい前に停止してしまっている古いダイバーは、ヒマワリスズメダイという名を見れば、きっと首を傾げるに違いない。
伊豆で潜るとフツーに出会うことができるコガネスズメダイにそっくりなこのヒマワリ、20年前ならコガネスズメダイの腹ビレが白いタイプ、ということで業界の認識は一致していた。
より南方の海なら、たくさん群れているところもある、ということも知られていた。
でもどちらも水納島にはいないものだから、そんな話などすっかり忘れてしまった頃、岩場のポイントの深いところで、他の魚と交友を深めることなく、一人寂しげに中層を泳いでいるコガネスズメダイらしき魚を見つけた(下の写真は、その時の子ではありません)。
はてさて、黄色いスズメダイ。
コガネスズメダイに似ているけど、何かが異なる(なにしろ南洋タイプのコガネスズメダイの存在などすっかり忘れていたので)。
その2年後(2006年)、同じ場所でこういう魚を発見した。
他にたくさんスズメダイがいるその場所で、この個体のほかにもう1匹、都合2匹しかいないにもかかわらず、どのスズメダイよりも強気で、存在を主張していた。
はて、見たことがないスズメダイ……
…ん??
ひょっとして!
これは上の黄色いヤツがオトナになった姿なのでは?
と、例によって勝手に騒いでいたところ、困ったときの頼れるゲスト・世界のM下さんが、このグレーの魚はアルファスズメダイではなかろうかとご教示くださった。
それをうけて、では黄色い子はアルファスズメダイの幼魚ってことか…とその後しばらく思い込んでいたワタシ。
ところがそれからしばらくして、今度は砂地の根でタカサゴスズメダイの集まりに混じっているところに出会った。
それを拙日記上で紹介したところ、写真を見た鳥羽のタコ主任が、
「これはコガネスズメダイじゃないか?だらぁ」
と言ってきたのだ。
鳥羽水族館の名にかけてそう言うからには、きっとそうなのだろう。
だがちょっと待て。
そうなると、これまでずっとアルファスズメダイの若魚と断じてきた黄色いスズメダイの立場は??
鳥羽のタコ主任に問うてみた。
すると彼は鳥羽水族館の名にかけて……………
……瀬能さんに問うたのだった。
そして瀬能さんいわく、
黄色いスズメダイはコガネスズメダイ
グレーのスズメダイはアルファスズメダイ
と、力強い結論をご教示くださったという。
鳥羽のタコ主任には異論を挟む余地だらけながら、天下の瀬能さんに異を唱える人は日本にはいない。
というわけで、この黄色い魚はコガネスズメダイっつうことで……。
……と一件落着したかと思ったら。
これまでコガネスズメダイで統一されていたものが、南方系のものについてはなんと別種とされた(2011年)。
その名もヒマワリスズメダイ。
クレヨンしんちゃんの妹のような名前に少々違和感を覚えつつも、これでもう種類不明でオタオタすることはなくなるだろう。
ヒマワリ畑のようにたくさん群れて真ッ黄ッ黄になればさぞかし見応えもあるだろうけど、残念ながら水納島では、過去23シーズン(2018年現在)で4個体しか観ていない。