全長 7cm
ダイビング中に出会えるギンポたちはやたらと種類が多い。
でも通常のファンダイビング、特にボートダイビングばかりやっていると、絶対にといっていいくらい会えないギンポたちもいる。
彼らは潮が引くとタイドブールになるような浅いところが大好きなので、それ以外の深いところでは全然見られないのだ。
新年早々にようやくシマギンポの存在を知ることができ、同じように浅いところを好むギンポたちに興味が湧いていた今年(2022年)の春先に、幾度か干潮時に合わせてタイドプールを訪ねてみた。
ひと坪ほどの広さでタイドプールになるところがあって、そのなかにゼータクな浴槽ほどの深みがあるので、そこでババンババンバンバン状態でタイドプールを覗いてみると、先述のシマギンポのほか、このホホグロギンポもわんさかいた。
これまでも冬に海辺を散歩をしているときに、干潮時ならタイドプールで水面越しにいくらでも目にしていたのだろうけれど、海中で目の当たりにしたのは人生初だ。
有名なモンツキカエルウオをシンプルにしたような姿形に見える。
水面下20cmほどのところでチョコマカと動き回っていて、冒頭の写真では奥にいる大きな子がオスなのか、それとも全員オスなのか、みんなメスなのか、とにかくみんなで盛り上がっていた。
ダイビング業界における変態社会ではひところタイドプールに住まうギンポたちをマクロ撮影するというのが流行っていて、ロウソクギンポがその世界のスターの座を欲しいままにしていた。
その流れもあって、水面下20cmの世界の住人ホホグロギンポも現在ではわりと有名で、彼らの恋の模様などもとっくの昔に(変態社会の)誰もが知るところとなっている。
それによると、婚姻色を発するオスは渋く黒光りし、お目当てのメスに対して求愛のジャンプを披露するという。
水面下20cmでジャンプするオスの姿をどのように撮るのかは不明ながら、ともかくもその婚姻色とやらは観てみたい。
というわけで5月にひと坪タイドプールを再訪し、ゼータク浴槽に浸って水中を覗いてみると…
メスらしき子の傍に、張り切っているオスの姿があった。
たしかに黒い。
これは暗いところにいるから黒く見えるのではなく、ホントに…
…真っ黒。
全身…
…真っ黒。
黒い姿で、メスに言い寄る。
このように黒くなっているオスが2匹以上はいて、周辺にメスがチラホラおり、オスが来るのを待っているようにも見えるし、何かが起こりそうな気配に満ち満ちていた。
ただ、そのメスたち相手にハイテンションモードで猛烈アタックしているような様子は観られたものの、ワタシがいるひと坪の水溜まりと、水深20cmほどの回廊で繋がっている隣の小さな水溜まりとを行き来しながらだったために、残念ながら近づいて様子をじっくり…というわけにはいかなかった。
でもワタシから見えないところでしっかり目的が果たされているのか、モテ期を迎えていたメスはとってもご満悦のご様子だ。
似たようなギンポに見えて、シマギンポと比べると興奮モードの色はまったく異なるし、よりいっそう浅いところがラブロマンスの場になっているらしいホホグロギンポたちだった。