全長 30cm
キントキダイの仲間も夜の帝王ではあるけれど、アカマツカサの仲間やイットウダイの仲間とはかなり異なるキントキダイの仲間に属する。
にしても、そもそもキントキってのは何に由来する名前なのだろう?
前々から気になっていたのでこの機会に調べてみたところ、大江山の鬼退治で有名な…というか、日本昔話でおなじみの、マサカリかついだ金太郎こと坂田金時のキントキなのだそうだ。
というのも、昔話では金太郎ながら、歌舞伎の世界では坂田金時の幼名は怪童丸といい、力漲ると肌が真っ赤になるという怪童丸伝説に基づき、歌舞伎における怪童丸=坂田金時の衣装は赤が基本だそうで、世間では「金時」=赤ということになっているそうな。
アッ、だから金時豆って名前なのか……。
となると世が世なら、シャア・アズナブルは「金時彗星」と呼ばれていたかもしれない…?
キントキの謎が解けてスッとしたところで、新たな疑問が。
ではホウセキキントキの宝石とはいったい??
それにはいろいろまことしやかな説があるなか、ルビーのように赤く輝く体色に由来しているともいわれている。
ルビー=宝石、なのでホウセキキントキ。
でもそもそもキントキが赤って意味なのに、なぜそこであえて赤い宝石の名が??
名前について深く考えるのはよそう…。
そんなことよりも遥かに重大な勘違いをしていたワタシ。
ホウセキキントキは夜の帝王だから、やはり昼間は岩陰でじっとしていることが多い…
…と思っていた。
ところがこのたび過去に撮った写真をふりかえってみると、岩陰に潜んでいるのはすべてゴマヒレキントキで、ホウセキキントキといえば日中でも表に出ているところばかりであることに気がついた。
ホウセキキントキ、表に出ていることのほうが多いのだろうか?
日中でもフツーにホンソメワケベラにクリーニングしてもらっているし……。
海域によってはこの魚が日中ズラッと群れていて、かなりカッコイイ。
撮影地:モルディブ
水納島周辺でも7〜8匹群れていたことがあったけれど、それが過去に観た個人的マックスで、残念ながら、沖縄、特に本島周辺ではほとんど単独ないしは2〜3匹でしか見られない。
ただし、群れてはいないもののやたらといる、ということはあった。
今冬(2019年1月)のこと。
砂地のポイントのリーフ際、水深10m前後ほどの浅いところのそこかしこで、ホウセキキントキが1匹ずつポツポツポツ…という感じで表に出ていたのだ。
ホウセキキントキがこのあたりにこんなに居たの?というくらいに。
これまで複数匹が集まっているのを観たことがあるのは岩場のポイントの深いところばかりで、こんな明るい砂地の浅いところで多数のホウセキキントキを観た覚えがない。
その様子がなんだか不思議だったから、そのうちの1匹に注目してみた。
すると、すぐ近くにいた別の子もスルスルスル…と近寄ってくるではないか。
近寄ってきたからといって2匹は何をするでもなかく、観ている間に体色を随分こまめに変える。
↑こういう色だったものが、あっという間に↓こうなるのだ(でまたすぐに元に戻る)。
濃淡を基本に、斑模様を出したりと変化は短時間に目まぐるしい。
体色を変えるのは自由自在のようで、だからこそときとしてこういうおめでたい2匹に出会うこともある。
紅白キントキ。
岩場のポイントで見かけるホウセキキントキは随分メタリックな感じで、同じ赤でもなるほどたしかに「ルビー」かもしれない。
でも白っぽいほうは……。
死ぬと赤くならずにこっちの色になっていたら、プラチナキントキなんて名前になっていたかも。
オトナになると30cmほどになるホウセキキントキにも、子供の頃がある。
残念ながらワタシはいまだホウセキキントキのチビターレを目にしたことはないけれど、15cmくらいの子にはあったことがある。
Oh、プリティ♪
15cmでこんだけカワイイとなると、金太郎サイズのチビターレはどんなことになるんだろう?
気になったのでネット上に転がっている写真を調べてみると、チビターレが群れている写真があった。
撮影地は伊豆だ。
南洋に行けば行くほど群れているようだから、ホウセキキントキの主生息域は「熱帯」地方なのだろう。
そういった魚の幼魚となると、沖縄よりも季節来遊漁がやってくる本土の海のほうが遭遇率が圧倒的に高い。
にしても、ホウセキキントキのチビターレの群れが観られるだなんて……うらやましい。
※追記(2019年8月)
その後もリーフ際からさほど離れていない浅いところでゆるく団体生活(?)を送っているホウセキキントキの1匹が、岩陰でジッとしていた。
はて、なにをいじけているんだろうと注目していると、いきなり……
波動砲発射。
ほとんど鯉のぼり状態だ。
これまでもホウセキキントキやゴマヒレキントキがアクビをしてこの波動砲状態になるのを目にしたことはあったものの、撮るチャンスに恵まれなかった。
なので、いつの日か波動砲…と願い続けて幾星霜、この日その念願がついに成就したのだった。
もっとも、これは純粋なるアクビではなく、この念願成就には、実はその裏に陰の立役者の存在がある。
ホンソメワケベラヤング!
彼女のクリーニングテクニックがセーフティロックを解除してくれたおかげで、ホウセキキントキは波動砲発射に至ったのである。
ホンソメヤング、ありがとう。