全長 8cm
オニハゼはたくさんいるし、体色や形態が他に比べ際立っているわけでもなく、おまけになかなか近寄らせてはくれないから、ハゼ好きの方にすらスルーされがちな共生ハゼだ。
そんなオニハゼに似ているせいで、このオニハゼ属の1種はさほど珍しいわけではないにもかかわらず、業界デビュー(?)が随分遅れ、おそらくはいまだにキチンとした和名がつけられていない。
長らく「ホタテツノハゼ属の1種」という扱いだっただけあって、本家ホタテツノハゼほどではないにしろ、その背ビレは、広げるとけっこう存在感たっぷりの「帆」になる。
オスはその帆がひときわ大きく、ホタテツノハゼほどではないにしろ、なかなかカッコイイフォルムをしている。
とはいえただでさえすぐに引っ込む彼らのこと、オスは電光石火の素早さで巣穴に逃げてしまうから、目にする機会は圧倒的にメスの方が多い。
そのメスも、普段は背ビレを目一杯広げることは滅多になく、たいていの場合↓こんな感じで閉じられた状態になっている。
待てば海路の日和があるかと、この子の前で20分くらい粘ってみたけれど、巣穴からヒョコヒョココトブキテッポウエビが出てくるだけで、背ビレはその間まったく開いてはくれなかった。
なので現在のところ、個人的背ビレマックスはこれくらい。
ひょっとすると、この子は単独で暮らしているオスかもしれない。
お気づきのとおり、オニハゼ同様体色の濃淡を自在に変えられるから、砂底の環境によっては、上の写真よりもっともっと黒っぽいものもいるようだ。
そうかと思えば、白い砂底にいるチビチビなんて、↓こんなに白っぽい。
そんなホタテツノハゼ属の1種がパートナーにしているのは、コトブキテッポウエビだ。
こうしてエビが出てくるほどに警戒心を解いてくれることはちょくちょくあるというのに、オスが隣にチョコンと出てくれることがない。
…と書いていたところ、今年(2018年)ようやく記録にとどめることができた。
ヒレ全開モードではないけれど、両者の背ビレのサイズに大差がないように見えるのは気のせい?
ともかくもヒレ全開のその勇姿を、いつか撮ってみたい。
…と書いていたら、それもまた今年(2018年)に目撃することができた。
おお、常時この姿でいてくれるならば、スター性抜群のその雄姿(たとえメスでも…)。
地味、目立たない、すぐ引っ込む、という三重苦を乗り越えた果てに待っている全開背ビレ。
やはりそれは変態社会なのだろうか……。
※追記(2021年7月)
パッと見はオニハゼに似ているのに、長い間「ホタテツノハゼ属の1種」ということになっていたこのハゼ。
オニハゼとホタテツノハゼではそのレア度は月とスッポンだから、このナリでホタテツノハゼを名乗るのはどうなのよ…
…と誰もが思っていたのだろうか、ホタテツノハゼ属はオニハゼ属と同じグループということになったそうで、これまで「ホタテツノハゼ属の1種」と呼ばれていたオニハゼとそっくりなハゼたちはみな、「オニハゼ属の1種」ということに相成った(「日本のハゼ」新訂増補版)。
やっぱりそうだよなぁ、どう見てもオニハゼにそっくりだもの。
そういう意味では実にしっくりくる変更なのだけど、そのあおりで、なんとホタテツノハゼまでがオニハゼ属になってしまったのだった…。