全長 20cm
ハコベラの稿でも触れているように、普段観ているハコベラの「オス」の色合いが実は婚姻色である、ということを知った後、では彼らがノーマルカラーで過ごしていることはホントにあるのだろうか…
…というギモンを抱いていた頃、リーフエッジ付近で見かけたハコベラらしきベラは、ひと目見た瞬間から何か変だった。
すっかり「オス」サイズになっているのに、まるでマゼンタの版を抜いて印刷したかのように、赤味がまったくないのだ。
けっしてストロボ光が届かない距離だったからではないし、そもそも水深5m以浅の明るいところで、実際に肉眼でもこういう色に見えていた。
色味の違いもさることながら、ハコベラとは模様の入り方がまったく違っている。
ハコベラに似たこのようなベラがいるのかと思って調べてみたところ、該当者が見当たらない……
……と思いきや。
「ハコベラとヤンセンニシキベラの交雑個体と思われる」とされている写真が、「ベラ&ブダイ」図鑑の244ページに載っていた。
まったくビンゴではないけれど、ほぼほぼ同じ。
ハコベラもヤンセンニシキベラも、やはり産卵のときにはリーフエッジ付近までやってくる。
そして同じような場所、同じようなタイミングでバシュバシュ放精放卵している彼らだから、ハイブリッドもちょくちょく生まれるのだろう。
だからといって、これが両者のハイブリッドですっていわれても、いまひとつピンとこない。
ホントに交雑個体なんでしょうか。
Mの版が抜け落ちたハコベラなのか、ホントに交雑個体なのか、いずれにしてもそれがそのままオトナになれる確率は相当低いはずで、どっちにしろけっこうな「珍」であることは間違いない。
このハイブリ太郎君はそのシーズン中、少なくとも夏の間までは同じ場所に居てくれたのだけど、残念ながらその後姿を見かけなくなってしまった。
いつの間にかマゼンタの版が復活してたりして……。