全長 10cm(写真は4cmほど)
2021年のシーズンもいよいよ大詰めとなった10月の末のこと。
砂地のポイントの深場に行くとポツポツ観られる細長い系のウミエラチェックをしていたオタマサは、その根元に見慣れぬ魚が寄り添っているシーンに遭遇した。
その形はどう見てもタツノオトシゴ系だ。
水納島のこのあたりの水深(30mちょい)で出会える可能性があるタツノオトシゴ系といえば、オオウミウマかタツノカクシゴ(仮名)と相場は決まっている。
4cmほどと小さいとはいえ、タツノカクシゴ(
仮名)よりも遥かに大きい。
また、オオウミウマのチビにしては、体表のトゲトゲ感にはなにやら異なる種類感がプンプン漂っている。
はたして正体は?
それは撮った写真で後刻調べることとしよう。
4cmほどと小さいことだし、その場から急には逃げ去らないから、手にしているマクロレンズの被写体にはバッチリだ。
ところが。
この時オタマサが手にしていたデジイチは、たまたま前夜に微調整をしたあとにセッティングの不備があったために、レンズの焦点距離を変えることが不可能状態になっていたのだった。
マニュアルフォーカスでいながら、ピントはレンズ前50cmで固定状態という、リャンハン縛りどころかハネ満縛り状態になってしまったオタマサデジイチで撮れる写真は……
画角的にこれが精一杯…。
それでも後刻パソコンモニターで拡大して見れば、その正体を探ることは可能だ。
さっそく(ワタシが)調べてみたところ、なんとこのタツノオトシゴ系はイバラタツらしい。
イバラタツなんていったら温帯域限定かと思いきや、沖縄にも分布しているそうだから、水納島にいてもおかしくはない。
とはいえネット上で見られるイバラタツの写真のほとんどは、伊豆半島をはじめとする本土の海で撮られたものばかり。
四半世紀以上におよぶ我々の水納島潜水生活においても、これが初めての登場だ。
そんな千載一遇のチャンスに巡り会えたオタマサ。
ああしかし。
肝心なときに、50p以内に近づけないマクロレンズ状態…。
そんな時!
オタマサが取り出しましたるは、普段ゲストを撮るとき以外なかなか活躍の機会がないせいで、当店にとってはコスパ的にやたらと高価になってしまっているコンデジ、TG-5。
冒頭の写真はこのコンデジのおかげなのだった。
シーズン中は打席に立つたび三振ばかりだったトマソンが、優勝がかかったラストゲームでサヨナラホームランをかっ飛ばしたかのような(実際にはそんなシーンはありませんでしたが…)、汚名返上名誉挽回面目躍如の大活躍じゃないか、TG-5!。
2日後再訪するチャンスがあったので、オタマサに案内してもらって遭遇現場を訪れてみた。
すると案の定……
Gone。
ウミエラなどという頼りない拠り所にそうそう長居するとは思えないから、いなくなっているのは覚悟のうえだったとはいえ、打席にすら立たせてもらえなかった感がなんだかムナシイ…。
なにはともあれイバラタツ、10cmは超えるサイズにまで育つというから、4cmくらいとなればまだまだ幼魚といったところだろう。
実は探せばもっといるのだろうか。
それともホントにホントの千載一遇、人生的にはハレー彗星級だったのだろうか。
なにはともあれ、記録に残せてよかった良かった(ワタシは観てないけど…)。