(あるいはクロウミウマ)
全長 17cm
こんな形の魚は全部タツノオトシゴでいいじゃん……
って言いたくなるほど、タツノオトシゴの仲間には種類が多い。
タツノオトシゴ自体は大昔から有名な魚で、ワタシの世代ならガッチャマンやタイムボカンシリーズなどでお馴染みのタツノコプロでは、当時からタツノオトシゴ(らしき魚)がロゴマークに使用されているほど。
ところが今世紀になってから、それまでみんながずっとタツノオトシゴと呼んでいたものが違う名前になり(ハナタツ)、天下の大御所写真家大方洋二さんすら見覚えが無いとおっしゃるほどの馴染みのないものがタツノオトシゴということになってしまった。
本家本元のザ・タツノオトシゴですらそのようにややこしいことになっているくらいだから、その仲間たちとなればなおのことわけがわからない。
なので写真の魚はホントにオオウミウマなのかと言われると、「ひょっとするとクロウミウマかもしれません、ええ……」と遠い目をして答えざるをえない。
まぁ種類が何であれ、こんな摩訶不思議な形をしたタツノオトシゴ類があちこちにいれば、さぞかし楽しいに違いない。
しかしあいにく水納島では、当コーナーで「タツノカクシゴ」と仮称しているマニアックな小さなタツノオトシゴ類を除くと、通常のボートダイビング中に出会う機会はほとんどない。
ただ、前世紀の最終盤(2000年)のこと、当時クロワッサンのドレイとなって社会から足を踏み外しかけていたヨイチ氏が、水深20mちょいの砂底をあてもなくさまよっていたとき、ふと砂底を見るとスノーケルが落ちていることに気づき、使えそうだから回収しようと近寄ったら……
…それはオオウミウマだった、ということがあった。
スノーケルと見間違えたほどにでかいのだ。
冒頭の写真ではちゃんと体を立てているけれど、よいち氏が発見したときは砂底にダレ〜ンと横たわっていたという。
20cm近いこんな形のモノを水中で見れば、たしかにスノーケルに見えなくもない。
その後1ヶ月間ほどほぼ同じ場所にいてくれたので、その間貴重なネタとして大活躍してくれたオオウミウマ。
体色が随分異なるので同じ個体かどうかは不明ながら、時にはサボテングサについていることもあった。
ところが、さあこれから夏本番、という時、忽然と姿を消してしまった。
繁殖期だからたまたまそこにいただけだったのだろうか。
タツノオトシゴの仲間はオスがお腹(育児嚢)で卵を保育し、お腹で卵から孵化させるのだけど、上の写真でもお腹に卵を抱えていそうな雰囲気。
「子供が孵るまでじっと我慢のお父さん」だったのかもしれない。
それから20年近く経った今、いまだ再会は果たせていない(ビーチ内で再会できたと思っていたら、どうやらそれは別の種であるらしい)。