水納島の魚たち

ミゾレフグ

全長 25cm(最大50cm)

 この「フグの仲間」の稿の「いわゆるフグたち」として紹介しているもののうち、上段の5種は「モヨウフグ属」というグループに属すフグたちだ。

 日本には他にもモヨウフグ属がいるけれど、水納島で我々が確認しているのは今のところこの5種のみ(アラレフグやタスジフグは、過去に出会っていてもサザナミフグモヨウフグだと思い込んでスルーしているかも…)。

 その5種の中では圧倒的に出会う機会が少ないのが、このミゾレフグだ。

 それなりにサイズはあるし目にも眩しいドット模様が特徴的だから、いれば見逃しているとは思えない。

 インド洋の西から太平洋の東まで、かなり広範囲に分布しているにもかかわらず水納島で出会う機会が少ないということは、より熱帯域ラブなフグということなのだろうか。

 たとえ数は少なくともこれまで何度か出会ったことはあって、いずれの場合も岩場のポイントでのことだった。

 大きくなると50cmほどになるそうながら、出会ったことがあるのはいずれも30cm弱くらいだから、若魚なのだろう。

 ただし数少ない出会いはすべてゲストをご案内中のことだったため、残念ながら撮影するチャンスに恵まれたことは一度もない。

 そのためこのミゾレフグもまた、「出会ったことはあるのに記録を残せていない魚」のひとつに長らくリストアップされ続けていた。

 …のだけれど。

 例によってオタマサが昔撮った写真、それもフィルム用カメラからデジイチになるまでの過渡期の数年間使っていたコンデジ写真を振り返っていたところ、たった1枚ながらもミゾレフグの写真を発見!

 ファイルデータによると、2008年8月に撮影されたもののようだ。

 12年も前じゃん……。

 ワタシが岩場のポイントで何度か出会ったミゾレフグは、サザナミフグがよくそうするように、中層でプカプカ浮いた状態で静かにたたずんでいたから、この写真のように壁際でややオドオドげな様子は馴染みがない。

 出会う機会が少ないのは、オドオド系フグだからこちらが気づくよりも先にサッと逃げ隠れしているからなんだろうか。

 そんなわけで、過去25年で今のところ唯一のミゾレフグ画像記録、あわや暗闇の深海でお蔵入りの眠りにつくところ、かろうじてサルベージに成功したのだった。

 追記(2021年10月)

 これまでずっと冒頭の写真がただ1枚あるのみだったミゾレフグ記録に、今夏ようやく新たな写真が加わった。

 ゲストが見つけてくださったもので、岩場のポイントでボートを停めているすぐ下の浅いところで、オドオドと佇んでいたミゾレフグ。

 そのサイズ、正面を向けばビリヤード球くらいのミニミニだ。

 久しぶりに会ったミゾレフグは、人生最小級のチビなのだった。

 ボートを停めているすぐ下くらいの浅いところに、フツーにいるんだなぁ、ミゾレフグ。

 追記(2024年5月)

 ミニミニミゾレフグは1年後もほぼ同じ場所に居てくれた(おそらく同一個体)。

 1年経ってちょっぴり大きくなっていただけではなく、態度もなんだか不遜な気配が漂っていて、カメラに向かって威嚇するかのように近づいてきたかと思うと、傍の塊状サンゴをガリボリと貪り始めた。

 口の周りの皮膚をケガしないように…ということなのだろうけど、食べるときにいちいち大きな歯を剥き出しにする様子が、やたらと獰猛そうに見えるミゾレフグなのだった。