水納島の魚たち

モンツキアカヒメジ

全長 30cm

 流れが無い、もしくは緩やかであれば、砂地の根の近くの中層で大勢集まっているモンツキアカヒメジ。

 けっこうな数になることもあり、けっして小さくはない白っぽい魚体が群れている様はなかなか壮観だ。

 根の近くにいる場合はたいていその根にアカヒメジヨスジフエダイの群れもいて、根の周りにいるアカヒメジ&ヨスジフエダイたちの、さらにその外側にモンツキアカヒメジたちがいる、というシーンをよく観る。

 ただ、どうもモンツキアカヒメジの群れには固い結束というか、まとまりといったものがなく、やること無いけんとりあえず集まっとるだけやけん…的な、群れが漠然としている感がある。

 もっとも、いざというときはその結束力はやはり堅いらしく、我々ダイバーが近づくと、サーッと潮が引くように集団のまま離れていく。

 根に対する依存度はさほど高くないようで、随分遠くまで離れていくため、群れ自体はわりと見応えがある規模なのにもかかわらず、アカヒメジに比べると、中層で群れている彼らに近づいて観察したり写真を撮ったりするのがムツカシイ。

 一方、流れが強めの時は、流れを避けて底付近に降下し、やる気なさそうに集まっている。

 面白いことに、底に這いつくばって流れをやり過ごしているモンツキアカヒメジたちは、ヨメヒメジ同様、体に瓦礫模様を現している。

 こうして光を当ててしまうと赤い模様が目立つけれど、海中では礫が作る陰影と変わらぬ色合いに見えるから、海底にいる際には白っぽいままでいるよりも都合がいいのだろう。

 その体色変化は一瞬の早ワザで、瓦礫模様からあっという間にノーマルカラーに変わるのだけど、こればかりは動画のほうがわかりやすい。

 アカヒメジよりも海底への依存度が高く見えるモンツキアカヒメジは、食事もやはり海底で摂る様子をよく見かける。

 近くには統一感の無さそうなボンヤリした群れがあり、めいめいが思い立ったら群れから離れ、海底に降り立って餌探しをしていることもあれば、集団で海底を漁っていることもある。

 アカヒメジにもこのような習慣があれば、ヒゲが無いなんて勘違いをする方もいらっしゃらなかったことだろう。

 ところで、名前の由来である体側の紋は、海底にいるときや海底近くでのんびり群れているときは、写真下のようにハッキリ出ている。

 ところが中層に群れている時や、スタコラサッサとその場を去る時には、ほとんど紋が見えない。

 白い砂地を背景にするにあたっては、紋など目立たないほうが都合がいいのだろう。

 微妙な体色の変化ながら、ノーマルカラー、瓦礫模様消えかけ、そして紋が消えている3パターンが一緒に写っている写真を見るとわかりやすい。

 「紋付」アカヒメジと言いつつも、その紋は条件付きで出現するのだ。

 さしづめ、チュウモンツキアカヒメジといったところか。

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