全長 20cm
このお魚コーナーのリニューアルに際しモンガラの仲間たちにとりかかったこの春(2019年)、手持ちのモンガラ類の写真をまとめてみたところ…
…なんてこった、ムスメハギの写真が1枚もない。
デジタルになってから、たったの1枚すら記録に残していないではないか。
しょうがない、とりあえず秘密基地に保管してあるポジフィルムで代用すべく、写真ファイルを探してみたら…
…なんてこった、たった2枚、それも大昔に撮ったものしかなかった。
ハギという名前ではあるけれど、メガネハギと同じくモンガラ類の仲間になるムスメハギは、そもそもなんで「娘」ハギという名前なのかと不思議に思いはしても、とりたてて美しいわけでも面白い行動をする(と知られている)わけでもない。
なので一般的にみても、ムスメハギにレンズを向けるヒトは少なかろう。
とはいえ今年で水納島の海に潜り続けて四半世紀になろうというのに、写真がたった2枚しか無いなんて。
なのでこの機会にムスメハギを撮っておこうと思い立った……
……のだけど。
…なんてこった、ムスメハギがいない。
そういえば、近頃はムスメハギの姿を観ていないような気がしてきた。
昔撮ったムスメハギの写真のフィルムマウントには、当時も今も普段よく行く砂地のポイントの名前が記されてあった。
そのため数日砂地のポイントでずっと探してみたのに、よく似た仲間のツマジロモンガラは100匹くらいいても、ムスメハギはただの1匹もいない。
記憶ではいつでもどこでもフツーにいる魚だったはずなのに、ムスメハギも知らぬ間に水納島から絶滅しちゃったんだろうか。
…そこで場所を変え、普段あまり潜らないところに行ってみると……
…ムスメハギがやたらといたので驚いた。
基本的に単独で暮らしているようながら、1匹いると、かなりの高確率でその近くに体のサイズが異なる他個体がいる。
オスの縄張り内にメスがいるってことなのだろうか。
後日また別の岩場のポイントに行ってみたところ、やっぱりムスメハギはフツーにポコポコいた。
そうだよ、ムスメハギってやっぱりフツーに観られるんだよなぁ。
もともとムスメハギは、岩場のポイントのほうが好きな魚だったのだろうか。
それとも昔は砂地のポイントにもいたものが、人一倍ダイバー嫌いなために、ダイバーが大勢訪れるようになってしまった各砂地のポイントから撤収してしまったのだろうか。
こうしてムスメハギに注目するのなんて、おそらくその昔フィルムで写真を撮った95年以来のことかもしれない。
そのためやたらと新鮮で、ついついずっと観ていると、面白いことに気がついた。
頬(?)の模様がトレードマークのムスメハギ、この模様は黄色かったり黒っぽかったりする。
これは個体差なのだろうかと朧げに思っていたところ、1匹のムスメハギをずっと観ていると、あっという間に色を変えた。
最初黒っぽかったものが……
あっという間に……
手品〜ニャ。
体の右側と左側で色が違うなんていう、ナポレオンズやマギー司郎の手品のようなオチではありませんから。
こうして見比べてみると、頬の模様が黒っぽいときには、体後半の縁周りも黒っぽくなっていることがわかる。
どういう気分の時にどっちの色になるのか、細かいところは依然不明ながら、これまで24年もの間ほぼ無視してきていながら、いきなり詳細を知ろうなんてのも虫が良すぎるというモノか。
ちなみにムスメハギのチビターレは、ネット上に散見される写真を見るとたいそうカワイイ。
我が豆腐脳の記憶では、チビターレに出会ったことはただの一度もない。
水納島でフツーに観られるモンガラ類の中で、10cmよりも小さなチビターレを観たことがないのは、ひょっとするとムスメハギだけかもしれない。
というわけで、ムスメハギのチビとの遭遇も、今シーズン(2019年)のテーマに急浮上したのであった。
※追記(2019年8月)
その後も出会うたびにムスメハギに注目していたところ、一度だけ砂地のポイントで出会うことができた。
それも、5cmちょいほどの小さな子だ。
ああ撮りたい!
しかしゲストをご案内中。
その時は残念ながら眺めるだけで終わったのだけど、まったく場所が異なる岩場のポイントで、ほぼ同サイズのムスメハギチビに出会うことができた。
色の配分はオトナと変わりなく見えるものの、オトナにある目元の凄みがチビには無いので随分可愛く見える。
第1背ビレを立ててキバッたポーズをしても……
やっぱり可愛い。
※追記(2019年9月)
その後、今度は砂地のポイントの、砂底と転石ゾーンとの境目くらいのところで、さらに小さなチビターレに出会った。
4cmにも満たないチビチビで、未成魚のホンソメワケベラと比べても……
このサイズ。
岩場で観られるものと比べると随分体の色が白っぽく、そのうえ小さいから儚げに見えなくもないけれど、そこはモンガラのチビターレ、キバるときはキバる。
これまでずっとスルーしていたムスメハギながら、このチビの存在を知れば、オトナだってもっともっと気になってくるかもしれない。
とにもかくにもムスメハギチビターレ、今シーズン(2019年)冒頭に掲げたテーマのひとつ「ムスメハギチビとの遭遇」を果たすことができたのだった。
※追記(2023年2月)
昨夏(2022年)から年明けにかけて同じ場所で観られたチビターレは、これまでで最も可愛く撮れたような気がするのでここの登場してもらっておく。
Oh,プリティ!