全長 30cm(写真は4cmほどの幼魚)
南米はアマゾン川の小さな小さな支流あたりが原産の熱帯魚に、「ペンシルフィッシュ」というアクアリストにはお馴染みの魚たちがいる。
初めてこのナメラベラのチビターレを海中で目にしたとき、即座に「ペンシルフィッシュみたい!」と思ったものだった。
ただしナメラベラもシロタスキベラ同様、チビターレの頃は頭をやや下向きにしていることが多く(エサを探しているからか?)、いつも水面付近で斜め上向きになっているペンシルフィッシュとは真逆の姿勢ではある。
彼らチビターレが好んで暮らす場所もまたシロタスキベラのチビターレと同じで、リーフ際のなんの変哲もない死サンゴ礫転石ゾーンの海底でウロウロしている。
居場所も暮らしぶりもそっくりな両者だから、チビターレの頃は一緒になって泳いでいることもよくある。
ナメラベラもチビ同士が集まっていることもあるけれど、せいぜい3匹前後で、シロタスキベラのチビターレほどの数が集まるのは観たことがない。
そもそもの個体数の問題なのだろうか。
そのためか、シロタスキベラ・チビターレの集団にナメラベラのチビが1匹混じっているのを見かけることはあっても、その逆を目にした覚えはない(覚えがないだけかも…)。
認識可能ミニマムサイズくらいのチビチビ(2cmくらい)でも、やはり1人きりで寂しく過ごしている。
ナメラベラもシロタスキベラも擬態のつもりなのか、小さい頃は特に、「ヤバイ!」と思ったら体の前後をかわるがわる持ち上げる動きをするのだけど、頭部が下を向くのが基本姿勢で、頭と尾ビレの上下を入れ替えながらヘコヘコ泳ぐ様子が面白い。
このようにサイズも色柄もペンシルフィッシュのようなナメラベラのチビがやがて成長すると…
シロタスキベラの同サイズの頃に比べると遥かに地味ではあるけれど、コントラストが強まってわかりやすい色合いになる。
ところがさらに成長して10cmくらいになると…
強かったコントラストが弱まり、いささかザンネン系の道を歩み始める。
そして10cmを軽く超えるサイズになると……
かなりザンネンな姿に……。
ただし本人は自分の色合いには頓着していないらしく、真逆カラーのマルクチヒメジ・キレンジャーと行動を共にしていることもある。
もっとも、他の魚について行く習性があるのはマルクチヒメジのほうなので、この場合色に頓着していないのはマルクチヒメジキレンジャーのほうではある。
これでまだ若魚段階のようながら、メスになってもこのダークな雰囲気は大して変わらない。
さらに性転換してオスになると、このままダーク路線まっしぐらなのか……
…と思いきや。
なんだ、けっこう派手めじゃないか、オス。
ただしややこしいことに、ナメラベラのオスはシロタスキベラのオスとそっくり。
そのそっくり度合いは、若人あきらと郷ひろみ級といっていい(古すぎ?)。
学生時代に自分が乗っていた車がガゼ―ルだったのかシルヴィアだったのか思い出せず、前世紀末に社用車にしていた車がコロナだったのかカリーナだったのか今でもわからないワタシに、この両者を見分けるなどどだい無理な話……
…と長い間諦めていたのだけれど。
シロタスキベラのオスにある胸あたりの白襷模様は、ナメラベラのオスには無いか、有ってももっと後ろの方になるそうな。
そしてナメラベラのオスは口の下顎部分だけがなぜだか黒いという特徴がある。
…ということを、近年になってようやく知るに至った。
おかげで長年コロナとカリーナなみに区別不能扱いだった両者を、さも昔から見分けていたかのようにこの場にて紹介しているのである。フフフ…。
のんきにエサを探しているオスは、リーフ際で他の魚たちと一緒に海底を徘徊したり…
リーフエッジ付近を悠々泳いでいたりする。
でもでっかいだけあってその行動範囲は広く、繁殖シーズンで盛り上がっているときなどは、↓こういう場所も徘徊している。
チンアナゴがニョロニョロ出ているくらいの砂底で、彼は実に悠々と泳いでいた。
縄張りを持つタイプのベラで、しかも大きいから、狭い範囲に何匹もオスがいるというわけではないらしい。
おまけに行動範囲は広いとなると、ナメラベラやシロタスキベラのオスに注目しているダイバーなんてそうそういないから、そういう意味ではオトナには「なかなか出会えない」と言えるかもしれない。