全長 30cm
とかく「ニセ」が名前に冠される魚は多い。
たしかに本家の真似をする偽物として世渡りしているものもいる。
けれど、なかには本人はまったく意図しているわけではないのに、勝手に偽物呼ばわりされているケースもある。
このニセクロホシフエダイも、クロホシフエダイに似ているということでニセモノ扱いされている。
でも両者は水揚げされた状態で見比べると似ているのかもしれないけれど、海中で観る分には随分違う魚に見えるから、「ニセ」というのはいささか強引な気がしなくもない。
図鑑のなかには、少数の群れか単独でいるのが観られる、と書かれているものもある。
リーフ際で観られる本種はたしかにおっしゃるとおり。
色味が違って見えるリーフ内で見かけた子は、ひとりぼっちだった。
ところが砂地の根の近くにいる群れは、けっこうな数に上ることもある。
こんな黄色い魚がけっこうな数群れている様子はなかなか壮観で、そのうえアカヒメジの群れなどと合流していると、まるでそこだけモルディブか、というほどの魚群になる。
ただしアカヒメジやヨスジフエダイが根から離れずに根の周りを逃げ回るだけなのに対し、ニセクロホシフエダイは群れのまま、随分遠くまであっという間に逃げてしまう。
多数で群れている時は、それがまた黄色い奔流のようで実に見事だ。
あいにくその奔流に接近することは容易ではないから撮影するのは至難のワザで、せいぜい遠目からお邪魔してパシャ…程度で終わってしまう。
だからといって単独でいるところなら撮りやすいかというとそうでもないのだけど、ときにはヨスジフエダイやロクセンフエダイが集まっている中に、何食わぬ顔をして紛れ込んでいることもある。
ニセクロホシフエダイだけの群れだと群れ全体で逃げていくのに、このように紛れ込んでいる時は逃げる素振りを見せないのは、ちゃんと周りの空気を読んでいるってことなのだろうか。