全長 10cm
ベラはひとくちで「ベラ」扱いされている…と当コーナーでしつこいほど述べているけれど、そういうわりにはカンムリベラやツユベラのチビ、はたまたオビテンスモドキのチビのように、ベラ変態社会人ではなくともけっして十把ひとからげにはされないものたちもいる。
では「ベラ」扱いされているものたちは、何がどう「ベラ」なのか。
それは、派手といえば派手な柄を纏いつつも、それでいて目を瞠るほど美しいというわけでもなく、やたらとたくさんいるために存在感はむしろ極めて地味という、略してジミハデなところが「ベラ」なのだ。
そういう意味ではこのニシキキュウセンときたらもう究極の「ベラ」といってよく、ニシキキュウセン見たさにダイビングをしているヒトに会うのは、おそらく海中でナメクジウオに会うよりも遭遇確率は低いと思われる。
たとえニシキキュウセンを見てみたいというヒトには会えなくとも、水納島ではニシキキュウセンにはいつでもどこでも級にフツーに会える。
リーフ際から続く死サンゴ石が転がる浅いところに多いニシキキュウセンは、イトヒキベラ類のように中層を群れ泳ぐことはなく、いつも海底付近をウロウロしていて、1匹のオスがいれば……
その周りにメスも複数泳いでいる。
チビの頃からある眼状斑が、メスにはまだ残っている。
オスとメスの中間くらいのものもいて……
オスからメスへ性転換途上のようにも見えるんだけど、6月に撮った同じような柄をしているものは…
卵でお腹がパンパンになっているらしいところをみても、社会的ポジション(?)はまだメスなのだろう。
ニシキキュウセンはもっぱら梅雨頃から夏場が繁殖期のようで、冬場にお腹が膨れているメスを観たことはない。
ではオスにも違いがあるのだろうか。
梅雨の初めに撮ったオスの写真を見てみたところ…
冬に撮ったオス(冒頭の写真と先に紹介したオスの写真)と、いささか趣を異にしている。
これは婚姻色なんだろうか。
こういう色を出していてメスを相手に活発な動きを見せている時は、普段のジミハデベラとは異なる魅力を味わえるかもしれない
フツーに観られる彼らが毎年セッセと繁殖しているわけだから、チビたちとなるとさらにたくさんいて、水深10m前後の死サンゴ石が転がる海底付近では2〜3匹で一緒にいることも多い。
このテの〇〇キュウセンの仲間たちのチビといえばたいていこんな感じだから、たくさん撮ればいろいろな種類のチビコレクションになるかも……
…と思ってたくさん撮ってみたら、すべてニシキキュウセンのチビだったりするくらい数が多い。
おかげで各段階のチビにも1度に出会える。
↓若魚〜メスといった段階のチビ。
↓若魚。
↓チビ。
そして↓激チビ。
激チビは真冬には難しいかもしれないけれど、各種世論調査会社が泣いて喜ぶほどに、限られた狭い範囲の1ダイブで全世代を網羅できるニシキキュウセンなのである。
ただしそれゆえに、ジミハデベラ認定されてしまうのだろうけれど……。