全長 40cm
水納島の砂地のポイントのリーフエッジ付近でよく目にする「ブダイ」は、どの種類を見ても「ブダイ」にしか見えなかった若き日々のワタシ。
でもその当時でさえ、このオビブダイだけは、他とクッキリしっかり区別がついていた。
名の由来になっている、腰(?)付近の「帯」模様のおかげだ。
海底付近で死サンゴ岩などについた藻を食べている様子は、ほぼほぼいつでもどこでも観ることができるくらいに個体数は多い。
フツーに観られるし「ブダイ」だしリーフ際の浅いところだし……というダイバーにおけるスルー3要素をお釣りが出るくらいに持っているオビブダイなので、注目するダイバーはけっして多くはない。
でも注目されないところで、なにげにコバンザメをつけていたりする。
また、リーフ際付近から随分離れた深めの砂底をウロウロしていることもあって、盛り上がっている最中だからなのか、普段と色味が異なっていることもある。
↑これは夏の盛りの8月に出会ったもので、海中では全体的な印象があまりにも普段のオビブダイと違って見えたものだから、まったく別の未知のブダイかと思ったほど。
でもこのやる気モードのオスが追いかけていたのは……
まぎれもないオビブダイのメスだったから正体がわかった。
オビブダイのオスだとわかって落ち着いて観ていると、興奮カラーらしきオスはさらに色を淡く変えた。
これほど淡くなってもしっかり残る帯模様、オビブダイという名は伊達ではない。
このままパステルオビブダイ状態で泳ぎ続けるのかと思いきや、ワタシがつきまとっていたからか、そもそも持続力が無いのか、その後すぐにほぼ通常色に変わった。
オビブダイは水納島ではいつでもどこでも目にするけれど、このようなやる気モードになっているのを見たのはこの時くらいかも。
通常よりもいささか早めの、8時過ぎに潜っていたからだろうか?
知られざるオビブダイの時間帯、略してオビタイムがあるのかも。
興奮モードはともかく、オスもメスもオトナならいつでも会えるオビブダイながら、ふと我に返ると、彼らのチビターレに出会ったことがこれまで一度も無いことに気がついた。
というか、オビブダイのチビターレってどんなお姿??
甚だしく「今さらながら」に恥を忍んで図鑑で調べてみたところ、我らが「ベラ&ブダイ」によると
(幼魚、若魚は)帯が出ていないと、一様に暗色で目立った特徴がなく、オウムブダイ、ヒブダイ、ハゲブダイ、スジブダイ、レモンブダイなどに似て、外見だけで識別するのは困難である」
…と、開き直りにも似た諦めの述懐が記されていたのだった。
ってことは、一見しただけでは誰なのかわからないチビチビたちのなかには、オビブダイのチビも混じっているのかも。
↑このうちのどれかがオビブダイだったり?
……全部一緒に見えるけど。
ともかくそんなわけで、ここまで
「ブダイ」の魅力はチビターレにあり
などと知ったふうなクチをきいてきたというのに、昔からよく知っているつもりでいたオビブダイのチビターレは、個人的にまったく未知のベールに包まれているのだった。
※追記(2021年11月)
依然オビブダイ・チビターレを認識するには至っていないのだけど、2021年シーズンはさらにブダイ類の産卵に注目していたこともあって、オビブダイの産卵シーンもちょくちょく観ることができた。
基本的にペア産卵のようながら、岩場のポイントで観た産卵はいささか異質だった。
どう見てもメスの体色をしているものが興奮モードになって、メスを誘ってペア産卵していたのだ。
1次オス2次オスというややこしい仕組みの彼らベラベラブダイたちのこと、メスの体色をしているオスが居ても不思議ではないとはいえ、メスの体色でありながら興奮モードになって、あまつさえペア産卵するなんて…。
この年は他にもメスの体色同士のハゲブダイがペア産卵するのを何度か見たものの、オビブダイもハゲブダイも、残念ながらメス体色同士のペア産卵シーンは記録に残せなかった。