全長 6cm
レモンスズメダイは、ルリスズメダイのようにリーフの中でもなく、セナキルリスズメダイのようにリーフの外の深いところでもなく、その中間くらいのどっちつかずのところ、すなわちリーフ上の切れ目や岩陰で、10匹くらいでパラパラと暮らしていることが多い。
気にかけていないときはそこらじゅうにいる気がするのに、いざ写真を撮ろうと思うと、すぐさま最寄りの岩穴に隠れてしまう。
そのため生息場所とも相まって、意識しないとあんまり印象に残らない魚かもしれない。
ただし幼魚となると話は別だ。
どちらかといえば地味めなオトナとは違い、レモンチビターレには、目の上にアオスジスズメダイのような鮮やかなブルーのラインが走る。
ひと目見るなりお近づきになりたくなること必至。
オトナとほぼ同じようなところにいるから、見つけるのはたやすい。
でもやはりウカツに近寄るとすぐさま岩陰に逃げてしまうから、慌てず騒がず、まずはじっくり観察してみよう。
※追記(2021年6月)
2019年の真冬のこと、とある砂地のポイントをフラフラ彷徨っていたところ、どういうわけだか水深20mほどのところにレモンスズメダイの姿があった。
先述のように、水納島では本来こういう場所でレモンスズメダイを見ることはまずないのに…。
もうすっかりオトナになっている子で、ちょこちょこテールアップ(オスがメスを誘う仕草)をしている様子を見ると、どうやらオスのようだ。
でも……
周囲には他に1匹もレモンスズメダイはいないんですけど。
どれほど精力的にアピールしようとも、その根にはメスの姿など影も形もなく、周りには訝しげにレモンスズメダイを見つめるソラスズメダイたちがいるのみ。
2日後別の場所で潜ったところ、これまた砂地の水深20m弱くらいのある根に、たった1匹だけレモンスズメダイの姿が。
先日の子よりはもう少し若そうながら、同じく周囲に他のレモンスズメダイの姿はない。
昼間はもちろんのこと、夜ごと居場所を変えて根から根へとウロウロするタイプの魚じゃなし、彼らは今後もその場で暮らし続けること確実であることを考えると、下手をすると一生相手に巡りあえないかもしれない。
それにしても、なんでわざわざこんなところに?
きっと前年の爆裂台風のせいで、本来住んでいるべきところにたどり着けなかったチビターレが、想定外のところまで吹っ飛ばされてしまったのだろうなぁ……。
この先台風の頻度が増し、爆裂台風の襲来も増えれば、魚たちのジョン万次郎やロビンソン・クルーソーがどんどん増えるかもしれない。