全長 20cm
夜の帝王たちは、どいつもこいつも似たような色形だから、いちいち区別して見ていない、という方もいらっしゃることだろう。
しかしこのスミツキカノコは、海中で観ても全身が黄色く輝いている点で、際立った存在といえる。
異例なのは色だけではない。
下顎のほうが上顎よりも前に突き出している、いわゆるウケグチになっているものが多いこの仲間の中にあって、このスミツキカノコは上顎のほうが前に出て、まるでハナゴイのオスのような口になっているのだ。
らしくな〜い……。
異例ずくめのスミツキカノコながら、居場所は他の夜の帝王たちと同じようなところで、リーフ際のオーバーハングや岩陰に、1〜2匹でいるのを見かける。
ただし水納島の場合はアカマツカサのように岩陰を覗けばどこにでもいる、というわけではなく、いたとしても多数で群れていることはないから、ご覧になったことがないという方も案外多いかもしれない。
ある意味レアであるともいえるスミツキカノコ。
レアといえば、ネット上に転がっているスミツキカノコの写真を見てみると、標本写真はさておき海中で撮影されたものには、背ビレを広げている状態のものが見当たらない。
たいてい↓こういう状態なのだ。
だから、たとえ全開じゃないにしろ、背ビレを広げている↓この写真はレアものである。
せっかく真っ赤なのだから、もったいぶらずにもっと広げてくれればいいのに……。
背ビレに比べるとレア度は低いものの、腹ビレを広げている写真も多くは無かった。
腹ビレの場合は、どういう風の吹き回しか、ピロッと広げてくれることもある。
腹ビレ、広くて長くて黄色くて、けっこうカッコイイ。
ああ、これで背ビレもバシッと広げてくれていれば、レア度ナメクジウオ級の写真だったのになぁ…。
ヒレを広げると意外にカッコイイスミツキカノコながら、正面から観ると……
……かなり別人28号系になる。
写真のファイル名には日付とポイント名しか書いてないものだから、写真の子がいったい誰なのかわからなくなり、スミツキカノコだと気がつくまでに随分時間を要してしまった。
ところで、名前の「スミツキ」はわかるんだけど、おそらく鹿の子模様のことと思われる「カノコ」、この魚のいったいどこが「鹿の子」なんだろう?
未だ見ぬ広げていないヒレの中に、バンビの印が隠されているとか??