全長 100cm(写真は25cmほどの若魚)
オトナになると1mに達するというツチホゼリ、残念ながら水納島ではそのような巨大なものは観たことがない。
オトナはもっと深いところに生息しているのだろうか。
これまで出会ったことがあるのはたいてい30cm以下の若魚で、淡いブルーが爽やかな雰囲気を醸し出す。
縄張りはあるようながら、ユカタハタなど根つきのハタのようには過ごしておらず、どちらかというとバラハタのように根にこだわることなく、いつも中層を泳いでいるイメージがある。
もっとも、まだ若いうちは縄張りの範囲が狭いからか、拠り所とする岩や死サンゴなどの周囲くらいに行動範囲が限定されているため、居ついてくれている間はいつでも会える。
若魚はオトナに比べれば青二才も青二才といっていいサイズのくせに、健気に縄張りを主張しており、カメラを向けたら逃げるどころかますます接近してきてカメラを睨みつけるほどだ。
小魚たちがたくさん群れ集う根で暮らしているわけではないから、普段何を食べているのだろうと思っていたら、フツーに魚をゲットしているようだ。
お腹がボコッと不自然に膨らんでいて、口元からは尾ビレらしきものがチラと見える。
魚たちが活発に泳いでいる日中に平気でゲットしているのだから、ツチホゼリ、いざというときは相当俊敏なのだろう。
このような25cm前後のツチホゼリには、ひと昔前なら年に1、2個体くらいの割合でちょくちょく出会えていた。
ところが近年はすっかりご無沙汰している。
ツチホゼリもまた、以前はいたのに居なくなってしまったハタになってしまうのだろうか。
…と思っていた2016年の夏、5年ぶりにツチホゼリに出会った。
それも、それまで観たこともないようなチビターレだ。
そのサイズ、わずか3cmほど。
淡いブルーの若魚とは違って、もっと濃いインディゴブルーのボディが、小さな体を際立たせる。
ツチホゼリのチビって、こんな感じだったのか…。
他にスズメダイやモンガラ類の幼魚がチョボチョボいるような小さな小さな岩を住処にしているチビターレ、さすがにこのサイズだとスズメダイなどはエサではなくお友達のようで、もっと小さな獲物を狙っているらしい。
ときおり砂底を注視しては、ダッシュして何かをゲットし、口をモグモグさせては、満足そうにゲップ(?)していた。
チビターレとはいえさすがハタ、その口はでっかい。
アクビをすると、さらにでっかい。
このチビターレ、初発見以来半月ほどほぼ同じ場所にいてくれたのだけど、残念ながらもっと成長した姿を観られないうちに、いずこへともなく消えてしまった。
チビターレには久しぶりに会えたものの、その後も引き続き、淡いブルーの若魚に会えない日々が続いている(2019年1月現在)。
若魚とコンスタントに会えていた頃も、オトナに出会ったことはないツチホゼリ。
成長とともに縄張りも大きくなり、より深いところへ行ってしまうのだろうか。
ちなみに、インド洋にいるツチホゼリの親戚筋Epinephelus flavocaeruleusのオトナはこんな感じ。
その昔新婚旅行で訪れた、モルディブ諸島はバンドス島で撮ったもので、おそらく70〜80cmはあったはず。
同サイズのスジアラやコクハンアラに比べると体高があるからやけにぶっとく見え、まるで泳ぐ不発弾のようですらあった。
チビターレのアクビは可愛げがあるけれど、こんなでかいのが目の前でアクビなどしようものなら、そのまま吸い込まれてしまうかもしれない……オタマサなら。
※追記(2020年3月)
オタマサがかつて撮ったコンデジ写真発掘作業をしていたところ、↓このような写真が見つかった。
ネット上で観られるツチホゼリの生態写真には、このような色合いをしたものもいるのだけれど、水納島で観られる20cmくらいのツチホゼリといえば、ほぼほぼ淡いブルーのものだけだったから、こういうタイプがいたことを知って驚いた。
もっとも、撮影日は2011年4月なので、思いっきり「今さらながら」ではあるんだけど…。
この写真、実は↓こういう状況だった。
さすがハタ、サビウツボをイジメている。
このように着底してジッとしているとこういう色合いになるってことなのか、それともウツボ相手に興奮しているからこういう色になっているのか……。
体の色味は違っていても、やはりカメラ相手の強気な姿勢は変わらない。
※追記(2020年10月)
今年(2020年)5月に、オタマサがツチホゼリのチビターレを発見した。
以前出会った淡いブルーのタイプとは異なり、体は藍色で、尾ビレが黄色くなるバージョンだ。
写真的に背後にいるミツボシクロスズメダイのチビが邪魔なのだけど、そう思ったのはツチホゼリチビターレも同様だったらしい。
なんと、ミツボシクロスズメダイ・チビに喰らいつくツチホゼリ・チビターレ!!
チビターレだから…と安心して不用心にツチホゼリチビの周囲を泳いでいたミツボシクロスズメダイ・チビには、やはり気のゆるみがあったに違いない。
しかし食い千切って獲物を食べるサメなどとは違い、基本的にゲットしたら丸飲み方式のハタ類のこと、いかにビッグマウスとはいっても、3cm弱の幼魚が2cmほどの、それも丸い形をした魚を飲み込むのは厳しかったようだ。
結局ツチホゼリ・チビターレは飲み込むのを諦め、ミツボシクロスズメダイ・チビは九死に一生を得たらしい。
その後このツチホゼリチビターレの成長を追いたかったのはやまやまながら、この時からさほど時を置かずに姿を消してしまった。
※追記(2023年1月)
長らく再会を果たせていなかったツチホゼリの若魚に、昨春(2022年)ようやく遭遇できた。
当初は警戒心が強く、ツチホゼリ若魚のくせにすぐに遠くへ逃げていたのだけど、だんだん人慣れしてきたのか、やがてツチホゼリらしくダイバーに対して縄張りを主張するような素振りを見せるようになってきた。
年が明けて1月になっても健在で、遠めに見かけただけながら、春に比べてふた回りほど大きくなったように見えた。
このままビッグサイズのオトナにまで育つ頃には、ここのヨスジやアカヒメジは全滅しているかもしれない…。