全長 100cm(写真は30cmほどの若魚)
子供の頃のコクハンアラは、シマキンチャクフグに擬態して世渡りをしているのだ。
……と、昔から言われている。
シマキンチャクフグにはいわゆるフグ毒があるから、どんなに腹を空かせた肉食魚といえど、見識のある者たちはけっして口にはしない。
そんな毒魚のフリをしていれば、他の魚に襲われる心配はない、というわけだ。
でもシマキンチャクフグといえば、大きくなってもせいぜい7〜8cmほど。
コクハンアラの幼魚がこの模様でいる期間がそれくらいのサイズまでというならともかく、30cmを超えても、いや、場合によっては1m近いオトナになってもまったくこのままの配色であることに、シマキンチャクフグとの関連性は見出せない…。
ところで、2009年以前にアップしてあった本稿では、コクハンアラについて、
「水納島ではふとした拍子にたま〜にその姿を拝める程度で、そうそう出会える魚ではない。」
と書いてあった。
ところが近年(2019年現在)は、チビターレから半オトナまで、随所で出会う機会が増えている。
すっかり会えなくなってしまったハタ(ツチホゼリなど)がいる一方で、やたらと増えているハタもいるのだ。
スジアラ同様アカジンと呼ばれることもあるコクハンアラは、これまた高級魚なので水産資源としての需要は高い(シガテラ毒が一部で報告はされているようだけど)。
水産資源確保という目的でときおり稚魚が放流されているスジアラのように、コクハンアラも人為的に増やされているのだろうか。
ともかくも増えたおかげで、近頃はリーフ際の浅いところで、白黒黄色のクッキリ模様のコクハンアラにフツーに会えるようになっている。
根に居つくタイプの魚ではないので、やけに目立つ体を晒しながら、ウロウロしていることが多い。
これくらいのサイズ(30〜40cm)の白黒黄色クッキリ若魚が、最も出会える頻度が高い。
以前まではコクハンアラといえばこれくらいの子だった。
ところが個体数が増えているせいか成長度合いの各段階を目にする機会も増えており、これが成長してオトナ模様(?)になっていく段階の子にも出会える。
成長すると、ブルースポットが出てくるコクハンアラ。
さらに成長すると、シマキンチャクフグ模様がすっかり跡形程度になった半オトナにも会える。
この半オトナの模様はやはり濃淡を変えることができるようで、↑この直前は↓こんなに濃かった。
これくらいのサイズになったら、あとは成長とともに跡形度合いが一層薄れていく…
…のかと思いきや、まったく別のポイントでのことながら、これより遥かに大きな1m級の個体にもかかわらず、白黒黄色クッキリのシマキンチャクフグ状態のコクハンアラも観たことがある。
そのそばにはもう1匹同サイズのコクハンアラがいて、そちらはやや跡形系の色になっていた。
コクハンアラの白黒黄色、いったいどういうことになっているんだろう?
しかし少なくとも、釣果としてネット上にアップされている超ド級特大コクハンアラの写真を見る限りでは、なるほどアカジンという方言名も頷けるほど赤く、完全なる成魚では名の由来の黒斑は影も形も無くなっているようだ。
釣り上げられたコクハンアラのオトナは赤いけれど、海中ではどんな色合いなんだろう?
それはさておき、コクハンアラもやはりハタ、ウツボがお嫌いのようで、たまたまウロウロしていたサビウツボ(矢印の先)を執拗に追いかけていた。
サビウツボ、いつでもどこでもハタ類に追いかけられすぎ…。
大きなコクハンアラに出会える機会が増えた一方、小さい子に出会えるようにもなっている。
2016年に出会った10cmほどのこの子は、当時の個人的ミニマム記録を大幅に更新し、大いに盛り上がったものだった。
でもこんなに小さな子がいるのなら、探せばもっと小さな子にも会えるはず。
その希望は翌年かなった。
ミニマム記録、さらに更新。
5cmほどのチビターレ。
これくらい小さければ、シマキンチャクフグ模様をしている意味もわかるというものだ。
それに、さすが5cm、やたらとカワイイ。
さらに小さい頃は、いったいどんな姿形をしているんだろう?
2019年1月現在、まだミニマム記録は更新されてはいない。
※追記(2020年9月)
今年(2020年)5月、ついにミニマム記録更新!!
人生最小記録更新、3cmのチビターレ!
このチビターレがどんなに小さいか、いくらなんでも人差し指対人比はムリだから、対アオギハゼ比で……
こんなに小さいと、末は巨大なハタになるとわかってはいても、やたらと可愛い。
でもやっぱりハタはハタ、どんなに可愛い子ぶってはいても……
でっかい口!!
ふとしたはずみにたちまち本性を露わにする、コクハンアラ・チビターレなのだった。
※追記(2021年7月)
ミニマム記録を更新した昨年、その一週間後には、ありそうでなかなかないミラクルツーショットシーンに遭遇した。
3cmのミニマムチビターレを再訪したさいのこと、その傍になんと……
擬態モデルと言われているシマキンチャクフグのチビが!
さすがに肩を寄せ合うほど寄り添ってはくれなかったけれど、シーン的にはかなりレアですよね?