全長 10cm
ウミスズメという鳥の仲間もいるし、魚でスズメといえばスズメダイの仲間もいるからややこしいけれど、魚のウミスズメはハコフグの仲間だ。
水納島で観られるハコフグといえば、ミナミハコフグや渋いところでクロハコフグがおなじみだ。
そしてちょいレアなコンゴウフグもいる。
それらに比べると、このウミスズメは水納島では相当レアものだ。
ところが過去に1度だけ目にしたことがあって、その貴重な1匹が、某有名海洋写真家が実名で初めて世に送り出した作品集「ゆかいな魚大集合!」に載っている。
今では手に入れることすら難しい幻の名著ながら、そのロケ地のほとんどが水納島だから、未見の方は是非ともご一読ください。
写り具合いと同じく頼りないウスラボンヤリした記憶では(なにしろ前世紀のことですから…)、上の写真はその写真集に掲載されているウミスズメと同じ子のはず。
それどころか、同じ撮影日時だったはず。
当時はまだ水納島に越してきたばかりで、水納島では何が千載一遇で何がこの先もずっと会える魚なのか、まだ手探り状態だったワタシは、それ以前の数年間西伊豆の大瀬崎では親戚のシマウミスズメのチビにはよく会っていたこともあって、このウミスズメとの遭遇のチャンスを、某有名(になる前だけど)海洋写真家に譲ったんじゃなかったっけか。
まったくの記憶違いならゴメンナサイ。
いずれにせよこの時の出会いが、それ以前も含めた水納島での半世紀で、海中での唯一の出会いになろうとは夢にも思っていなかった。
おかげで、証拠写真的にテキトーに撮ったヘナチョコ写真だけが、手元に残る唯一の記録となったのだった。
モノを知らぬと損をする。
そんなウミスズメと再会を果たしたのは、2014年1月のことだ。
オフシーズンのお散歩日和だったので、ヒマにまかせて海岸を散歩していると、なにやらアヤシゲな物体が打ち上げられていた。
これ。
あの日あの時はかわいいそぶりを海中で楽しませてくれたというのに、15年以上の時を隔てて再会した姿が、まさか干物だなんて……。
立場が逆じゃなかったことを喜ぶべきだろうか。
変わり果てた姿ながら、干物でもレアである。
散歩中はカメラを持っていなかったので、思わず家まで持って帰ってきてしまった。
うーん、不気味といえば不気味ながら、可愛いといえば可愛くも見えるウミスズメ。
おそるべしハコフグ、干物になってまで可愛いとは。
それはともかく、海岸に打ち上げられて干物になるくらいだから、ウミスズメ、今もまだいることはいるんだなぁ。
次回は是非、生前にお会いしたい。