●海と島の雑貨屋さん●
写真・文/植田正恵
月刊アクアネット2021年4月号
去る2月28日に本部町町議選が行われた。
いちいち大変そうな新型コロナウィルス感染対策を思えば、誰が町議になろうと町民の生活にはほとんど関係ない選挙など、ありとあらゆる大事なことと同じようにずっと先延ばしにしてしまえばいいのに…
…などと不埒な考えが頭をよぎったものだ。
以前も紹介したとおり、町議選であれ県議選であれ国政選挙であれなんであれ、水納島には投票所が設けられないから、期日前にしろ当日にしろ、選挙のためには本島まで行かねばならない。
そのためには船賃を払わねばならず、おまけにおばあたちは港からタクシーで投票所まで行かなければならなくなる。
地域によっては徒歩数分のところに投票所が設けられているというのに、これでは一票の格差ならぬ一票の価格差ではないか…ということもかつて触れた。
今回は最も身近とはいえ口悪く言えば「たかだか」町議選、おまけに沖縄県でさえ非常事態宣言下とあれば、本島まで出向くリスクまでついてくる。
そのうえよりによってこの期間は定期船が異例の40日間という超長期ドック入りをしている最中で、これまた以前紹介したことがある小型ボートによる代船運航期間に当たっていた。
大きな連絡船に比べれば波に翻弄される小さなボートへの乗船は高齢者には大変な負担なので、おばあたちは代船運航中は誰一人として島外には出ない。
気球ですら世界を半周できてしまうかもしれない40日間であってもそれは変わらない。
ではおばあたちは今回の町議選の投票はできないのか?
というモンダイを本部町選挙管理委員会に突き付けた水納班班長は、ついに成果を得るに至った。すなわち…
水納島史上初の「島内期日前投票」!!
どう贔屓目に見てもヒマヒマ空間な臨時期日前投票所(水納小中学校オープンスペース)にて、水納島史上初の島内投票をするだんな。あくまでもこれは特別措置ながら、やればできることを証明した本部町選挙管理委員会。“一票の価格差”解消のためには、貴重な前例になるかもしれない?
やればできるじゃないか、本部町選挙管理委員会。
もっとも、コロナ禍における減便運航中のため、島内での滞在は6時間ほどという時間限定ではあるのだけれど、過疎化著しい島のこと、おばあたちが全員投票しにきたとしてもものの30分もあれば余裕で終了する。
そのうえ、せっかく投票箱が島に来たという大事な日に、ただでさえ少ない島民の若手(?)主要メンバーはこの日ほとんど島外に出ている始末。
「やってみたら、けっこう需要がありますねぇ、投票箱」
と役場に思ってもらえれば、次回もチャンスがあったかもしれないのに…。
結局、6時間滞在予定のところ最初の2時間で全員終了してしまったから、あとはもう予定時刻まで、投票所となった水納小中学校オープンスペースでゆんたくしているしかない選挙管理委員のみなさんなのだった。
そういうわけで、水納島的には記念すべき選挙となった今回の町議選なので 普段だったら自分が投票した候補者の結果ぐらいしか気にしないところ、今回は新聞に掲載されていた本部町議選の結果報告をつぶさに見てしまった。
それによると、有権者数1万666人のうち投票率は69%とのこと。
昨今の国政選挙などの投票率に比べれば随分高いけれど、これでも前回より5ポイントくらい下回ったそうだ。
さすが最も身近な選挙。
そしてトップ当選者の獲得票数はというと595票、惜しくも次点に甘んじた方は331票。
一般的な学校の生徒会長選挙くらいの票数で、「センセイ」になることができる本部町なのである。