●海と島の雑貨屋さん●
写真・文/植田正恵
月刊アクアネット2024年7月号
気象のメリハリが激しくなり、「記録的」とか「50年に一度」といった異常気象を表す言葉すらすっかり「日常」になってしまっているなか、今年も沖縄は梅雨を迎えた。
するとはじめは昔ながらの人にやさしいおだやかな梅雨だったものが、結局今季も終盤になって本島各地で大雨による被害を続発させている(水不足問題は一気に解決したけれど…)。
天気予報に傘マークばかり並んでいると、なかなか離島に出向いて海水浴をしに行こうという気にはならないものではある。
でも雨予報が出ていても合間合間には晴れ間も出たりすることもある沖縄の梅雨だから、コロナ禍前の5月、6月であれば、たとえ雨降りでも多くの日帰りツアー客でにぎわっていたものだった。
ところが今季は、シーズン中にもかかわらず海水浴場の入域客数はかなり減少している感がある。特に平日は、「依然としてコロナ禍中ですか?」というくらいの日も数多い。
5月6月といえば毎年中学校の修学旅行でにぎわう海水浴場も、今年は来島する学校も少なく、連日閑散としている。そのためせっかく梅雨の合間の晴れた日曜日にもかかわらず、午後のビーチは「カンサーン!」という鐘の音が響いていた。観光産業は全体的にはインバウンド客のおかげで好調なのかもしれないけれど、国内旅行者の数がこのまま激減してしまえば、気がついた頃には足元がグラグラになっているかもしれない。コロナ禍の次に控えていようとは夢にも思わなかった円弱禍。今こそ有効な円弱ワクチンの開発が待たれる…。
実際に連絡船の乗船客数のデータを比較したわけではないけれど、アフターコロナということで通常モードに戻ってきていた昨年と比べても、今年の客足はかなり少なくなっていると思われる。
そしてその少ないツアー客の半数以上が外国人旅行客という日も目立ち、日帰り海水浴ツアーを主催している大手レジャー業者さんの様子を見ていると、英語のブリーフィングを聞いているお客さんの方が日本語の説明を聞いている人よりも遥かに多い。
マリンレジャースタッフにうかがったところによれば、マリンスポーツをするお客さんが10人いれば、7人は外国人客という割合になっているそうな。
円安ならぬ円弱で海外旅行をしづらくなったということならまだしも、衰退途上国の道をまっしぐらに行くニッポン人の家計事情では、気軽に国内旅行をすることにすら二の足を踏むようになっているということなのだろうか。
インバウンドが復活し、早くも各地ではオーバーツーリズムの害がコロナ禍前状態に戻ってしまったという話が多いなか、はたして各観光地の日本人客の動向はどういうことになっているのだろう?
諸物価高騰やステルス増税による負担増などに伴う家計のやりくりとは基本的に無縁の富裕層にはそもそも踏むべき二の足などないから、これまで同様フツーに旅行をしていると思われる。
とはいえそのクラスの方々は基本的に薄利多売式の日帰りツアーなどに参加しない。
一方本来のターゲット層はというと、家計的に旅行の回数減は避けられず、その行き先や旅先での出費も入念に検討するに違いなく、従来のように気軽にテキトーにポチッとタップひとつでツアー予約、なんてわけにはいかない状況なのかもしれない。
そんなタイミングで、梅雨明けから本格的に港の大改修工事が行われる水納島。
入念に検討したうえで臨む旅行先として、大規模工事現場と化している島を選ぶ人がはたしてどれほどいらっしゃることだろう…。
客足が鈍いのはあくまでも梅雨のせいで、真夏になれば国内客はすぐに息を吹き返すのか、それとも円安改め円弱に起因する諸物価高騰の家計への打撃のために、国内客は鳴りを潜めたまま引き続きその半数以上が外国人旅行客ということになるのか。
この号が出る頃には、その答えが明らかになっていることだろう。