●海と島の雑貨屋さん●
写真・文/植田正恵
月刊アクアネット2024年12月号
(承前)
半年間の沈黙を破り、今年3月末になってようやく開かれた説明会では、翌4月からの港周辺での工事の開始をいきなり告げられた。
4月から海開きとなるビーチの真横でおこなわれる工事の開始時期とその段取りを、海開きの前月末に突如告げることになんら不都合を感じない神経は、おそらくヤクニンならではのものなのだろう。お役所がいうところの「公共工事」の「公共」とは、いったいどういう定義なのかと訊きたくもなる。
とにもかくにもこうして4月からの開始が告げられた今年度の工事、3月の説明会では、早くもGWから大規模な工事が始まり、もはや静かな夏は絶望的で、南東~南の風など吹こうものなら、昨夏同様連日白い濁り水が桟橋を回ってビーチ側に押し寄せているはず…と、レジャー業者の誰もがそう覚悟していた。
ところが事前の話とは違い、7月に入るまで工事が始まる気配はまったくなかった。
3月の説明会で配られた工事進行表によると、4月20日頃には作業台船が入ってきて、待合室前の浚渫&ケーソンを設置するための事前準備として、砂防柵のような構造物を埋め込む工事が始まる…という予定になっていたのに、これはいったいどういうこと?
聞くところによると、砂防柵を計画どおりに埋め込んだら浚渫した側に倒れてしまう可能性が高く、ここはもう一度工事計画を練り直さなければ…ということになってしまっていたらしい。ようするに、一から工法を検討していたというのである。
半年間まったく何もしていなかったというのに、今になって再検討って…。
令和6年3月の住民説明会にて配られた、工事概況の絵図。平成6年度の工期で実施されるはずの工事概要が示されているのだけれど、10月現在でこれまで手が付けられているところといえば、泊地とA護岸と記されている部分のみ。当初の計画では5月中旬から6月下旬までとされていたのに、始まったのは7月初旬で、10月の今もなお継続中だ。ここまで遅れていると、翌年3月27日までとされている工期に間に合うはずがないことは、誰の目にも明らかだ。説明会における説明どおりにコトが進んだことがないというジジツに鑑みれば、完成まで10年かかっても不思議はないし、『完成予想図』と大幅に掛け離れたものが出来上がる…ということもアリなのかもしれない。
おまけに工事発注者も受注者も、夏のオキナワには台風が来るということをまったく想定してなかったらしく、7月になってようやく始まった工事は、掘っては台風のために元の木阿弥…ということを2度ほど繰り返す始末。
今夏は本格的なストロング台風がまったく襲来しなかったというのにこの体たらくでは、本格派のストロング台風が来ていたらいったいどうなっていたことやら。
おそらくこの先の冬場の季節風による大荒れもまったく想定していないに違いなく、平成7年3月いっぱいという今年度の工期は、遅れに遅れること必至と思われる。落札してしまった請負業者は、きっと今頃取り返しのつかないことをしてしまったと嘆いていることだろう。
端緒について早々にこのつまずき、このままでは当初4年と計画されていた現場工事は、下手をすると10年計画くらいになるかもしれない。
それでも竣工まで至ればめっけもので、そこまで長引くと、場合によっては中途も中途、半端も半端の段階で予算がおりなくなるかも…。
北部土木事務所都市港湾斑による「説明会」での説明どおりにコトが進んだことが過去に一度も無いということに鑑みれば、「工事の途中で予算が尽きることはない」という話も甚だ心もとなくなってくるのだった。
なにはともあれ10月後半現在でも工事は遅々として進んでいないおかげで、今シーズンは当初覚悟していた工事禍にほとんど苛まれることなく済んだ。
それはあらゆる業者たちにとって望外の喜びだったことだろう。今シーズンの海に限って言えば、ズブズブユルユルな計画でありがとう、北部土木事務所都市港湾斑。
でも港はちゃんと完成させてね…。