年末年始で大阪の実家に帰省していた際、観るともなくつけていたテレビに、中村雅俊が出ていた。 ところが映し出されている映像は、中村雅俊の故郷だという石巻だった。 もちろん震災後の風景である。 石巻といえば。 日本人として一度は被災地を観る必要があるんじゃなかろうか…などという殊勝な気持ちを強く持っていたわけではないものの、ようやく実現できた今回のみちのく行、せっかくここまで来たのだから、北のマスターの故郷を探訪してみようと思い立った。 もとより現地に行って何ができるというわけではない。 現地に行って楽しんだことを、いろんな人に伝えよう!! マスコミが伝える被災地の話といえば、そのほとんどが現地が抱えている問題ばかり。 そこで、その売り上げに個人的に多大な貢献などできないかわりに、楽しかったということを伝えることによって、訪れる人を増やすことに1ミリくらいは役に立てるかもしれない。 なので石巻を訪れる我々は、今なお山ほどあるに違いない「考えなきゃならないこと」は心に留めおくだけにし、とにかく楽しむことにした。 さて、仙台駅にてアネモネフィッシュさん&すかてんポチ1さんの東京B型フィフティーズ(なんだか最強タッグチームみたい……)とお別れし、Tさん号はひとまず市内某所へ。 北のマスターをご自宅でピックアップするのだ。 当初我々は、この日電車で石巻へ行こうとしていた。 ところが、我々が石巻へ行くという予定を伝え聞いた北のマスターは、 「 11日 石巻行とのこと 節介ながら お供いたしませうか?」 とお声掛けしてくだっさったのだ。 ちなみにTさんご夫妻は震災直後、北のマスターが変わり果てたご実家でどこから手をつけてよいのやら途方に暮れていたところへ駆けつけ、あれよあれよという間に「片付け」を完遂されたのだという。 Tさんは、吹き飛んでしまった我が家の屋根をみるみるうちに解体して片付けてくれた、島の牛追い人・マサシさんのようなプロフェッショナルな人なのである。 仙台市街から、高速で一路北を目指す(インターでチケットを受け取る際に、機械が日本語の案内のあとに「 Please take a ticket.」と英語で言わないのがとても新鮮だった。あれって沖縄だけ??)。 Tさんがおっしゃっていたとおり、こちら方面は雪の気配など微塵もない青空が広がっている。 そしてようやく、石巻へ到着。 「いやあ………歩きですかぁ??」 なにやら止めておいたほうがいいですよぉ、という響き。 …と考えていたのだけれど。 ともかく港方面を目指した。 「記念にここを歩きましょう!」 北のマスターが言う。 Tさんご夫妻は車で橋を渡り、橋の向こう側で待機ってことなので、北のマスターと我々夫婦の3名で、寒風吹きすさぶ橋を渡ってみた。 この大橋、その名を日和大橋という。 そんな橋から、太平洋を一望できる。 津波の直撃を受けた被災地が広がっている。 今はただ、ポツンポツンと全壊を免れた家々が点在するばかり。 また、集積された瓦礫の山で、祝日(建国記念日)にもかかわらず重機がセッセとダンプに瓦礫を載せている。まず地域を建て直さなければならないこの地域に、「建国記念日」もへったくれもないに違いない。 僕らの眼には、今なお大量の瓦礫の山に見えるけれど、北のマスターによるとこれでもひと月前と比べただけでかなり少なくなっているらしい。 塵も積もれば山となるくらいだから、逆にすれば瓦礫の山もいずれは消える。 また別の場所には、自動車が堆く積まれていた。 被災地のことを何も知らなくとも、車が2年経ってもこうして山積み状態という様子を見るだけで、今なお復興へのいろんな足かせがかかっていることがうかがい知れる。 橋の向こう側に、Tさんの車が待ってくれていた。 さて、そろそろお昼時になってきた。 というわけでやってきました石巻漁港。 水揚げされたばかりのマグロがッ!! ………んなわけないじゃん。 ウミンチュさんたちみなお休みってことは、すなわち漁港の食堂もみなお休み。 旅行前に我々が「お、ここは♪」と思ったお店はすべて休日お休みであることはあらかじめ知っていた。 そう思っていたからこその、駅から徒歩行計画だったのだ。 が。 そんなオロカモノを救うべく同道してくださった仙台チームのおかげで、どうにかこうにかようやくランチをいただけるお店に辿り着けた。 旧北上川の中州にある石ノ森萬画館の対岸すぐのところにある、「石巻まちなか復興マルシェ」にそのお店はあった。 その有志のお1人が、北のマスターと同級生なのだという。 これも何かの縁。下手をしたらお昼ご飯を食べられないかも…と窮地に陥っていた我々が、まさに「冥加」のような飲食店にめぐり合えたのも、この場所に居を構えてくれた石巻まちなか復興マルシェのおかげである。 さあて、ランチをいただきましょう!! 後ろにダンボールが積まれてあることなど気にしてはいけない。 ここで僕が迷わずオーダーしたのがこれ。 海鮮丼♪ 近頃は日本全国どこの海辺に行っても「海鮮丼」というメニューがあるけれど、ここまで圧倒的に海鮮の丼をいまだかつて見たことがない。 メニューには他に、三色丼とか五色丼という海鮮系丼ものがあったので、はて、この海鮮丼というのはそれらと何がどう違うのだろうと不思議に思い、おねーさんに伺ってみた。 超豪華。 うちの奥さんはといえば、今が旬の海藻たっぷりの「海鮮めかぶ丼」。 ……って、昨日からこっち、ずっと運転してくださっているTさん、お酒は大好きだというのに飲めない状況の中、ダハダハダハと周りで無神経に飲んでばかりいてすみませんっ!! …といいつつ2杯目を頼むワタシ。 トレーラーハウスの店舗でありながら、出てくるメニューはどれもストロングな本格派。 みなさんもそれぞれお好みのものをオーダーされていて、そのうえさらに、是非みんなでつつきましょう!と北のマスターが頼んでくださったのがこれ。 ご存知、石巻焼きそば!! このところの全国的なB級テイストブームもあって、今や石巻に焼きそばありってことはかなり有名らしい。 有名だということはなんとなく聞いたことはあったものの、どんなものかはまったく知らなかった。 いわく、石巻焼きそばの麺は、二度蒸ししているのだという。 石巻焼きそばが有名だとはいっても、それは調理の方法とか具などに特徴があるものだとばかり思っていた。 餃子で有名な宇都宮の餃子の皮が、そこらで手に入る皮とは製法が一味異なるのだ、なんて話は聞いたことがないものね。 北のマスターによると、本当はソースを絡める以前から、二度蒸ししているために麺は茶色っぽいそうで、そのうえ調理でももっとソースを絡めるから、完成系はもっともっと茶色いはずなのだとか。 それでも人生初の石巻焼きそばである。 おお………たしかにフツーの焼きそばとは一味違う!!………ような気がする。 ホントはソースを絡めるのが基本らしい。 後刻訪れた物産店で、3人前入りの石巻焼きそばをゲットした。 なるほど、袋にも「二度蒸し」と明記してある。 帰ってさっそく!! 北のマスターから伝授された、本来ソースを絡めるものなのだという教えも、目玉焼きが載っているものなのだということもクリアした。 紅しょうが を買うのを忘れてしまった………。 ま、画竜点睛を欠いたものの、それでもやはり、マルちゃんのソース焼きそばとは一味違う北の味覚は、沖縄で食べてもかの地を思い出せるシアワセの味なのだった。 ※その他石巻のおみやげシリーズはこちら! |