全長 35cm
このイトヨリダイの仲間で紹介している他の仲間たちに比べると、群を抜いて大きいヒトスジタマガシラ。
ただし大きいからといってフタスジタマガシラのようにいつでもどこでも出会えるというわけではなく、たまに出会えるくらいの個体数だ(昔はもうちょっと出会う頻度が高かった気がする)。
出会う頻度の多寡にかかわらず、せいぜい2匹が一緒にいるところを見かけるくらいで、もっぱら単独で暮らしているヒトスジタマガシラは、ヒメタマガシラ同様白い砂底だとあまり目立たないため、サイズのわりにダイバーにとっての存在感はさほど大きくはないと思われる。
でもよく観ると、鼻筋に黄色い模様が入っていてなにげにカラフルだし、尾ビレの上下端はシュッと長く伸び、ヒメタマガシラよりもフォルムがカッコイイ(※個人の感想です)。
カッコイイけど、食事方法はフタスジタマガシラ同様で、砂底に顔を突っ込む勢いでボイッと砂ごと底生動物を口に入れ…
不要な砂をエラからバフバフ排出しながらモグモグする。
そういう食生活なものだから、立っているものは親でも使え、掘っているモノはエイでも使え。
ヤッコエイのおこぼれに与かろうとしているヒトスジタマガシラ。
食べ方が少々大雑把だから、それなりにケアも必要なのだろう、ときどきホンソメワケベラが出張サービスをしてくれることもある。
もちろんヒトスジタマガシラのほうから、ホンソメサービスセンターに立ち寄りもする。
ホンソメワケベラにクリーニングしてもらっているときでも、全体的な体色が大幅に変わることはないようながら、その名の由来と思われる体側の黒帯模様やヒレの黄色味の濃淡は、瞬時に濃淡を変えられる。
もっとも、どの色味であれけっして目立ちはしないけど…。
けっして珍しくはないのに、会いたいからといっていつでも会えるわけではないヒトスジタマガシラ。
フツーに会えると思っているうちに、やがてなかなか会えなくなる魚は多い。
たとえ存在感は希薄でも、会えるうちに会っておいたほうが後悔しなくて済みそうだ。
ところでヒトスジタマガシラ、オトナには会う機会はあっても、若魚や幼魚に出会った覚えがない。
…と思っていた今月(2020年8月)、オタマサが撮った幼魚は、どうもヒトスジタマガシラの幼魚っぽい。
15mmほどのチビターレ。
水深30mほどの砂底に転がる小石についているウミシダのそばでジッとしていたらしい。
オトナは近づくとスイスイと逃げていくけど、このチビターレはその場から離れずジッとしているお利口さんだったそうだ。
幼魚や若魚は、オトナよりも深いところでひっそりと暮らしているのだろうか…。
しかし聞くところによると、沖縄本島東海岸にある変態社会人御用達のダイビングスポットであるレッドビーチでは、タマガシラの仲間のなかでは幼魚もオトナもヒトスジタマガシラが最もフツーに観られるという。
ってことは、そもそも内湾的な砂泥底の環境を好む魚ってことなのだろうか?
出会う機会が少ないわりには、ネット上では釣果の写真がたくさん出てくるし、釣り人にはわりと知られているらしいヒトスジタマガシラ。
どうやらいるところにはいるけれど、水納島ではそれほどでもない、ということのようだ。