全長 20cm
水納島でよく目にするグルクンは、3つのタイプに大別できる、ということはササムロの稿で触れた。
その3つのタイプのうち、尾ビレに黒いチョンチョンがあるものといえば、タカサゴかニセタカサゴ、ちょいと意表をついてハナタカサゴくらいのもの……
…かと思いきや、このイッセンタカサゴという種類も頑張っている。
イッセンという名のわりには、やたらと線がたくさんあるように見える。
でもそのおかげで、タカサゴやニセタカサゴと区別するのはたやすい。
上の写真で、矢印の先の2匹はニセタカサゴで、それ以外はイッセンタカサゴ(のはず)。
ただし水納島ではタカサゴの群れに少数が混じっているのを見かける程度で……
ほぼイッセンタカサゴだけが群れているのを観る機会が、長い間なかった。
ところが2014年の春先のこと、この時期ならではのグルクンの若魚の群れに包まれてウヒョーッ!となっていたところ、その群れの構成員の半分以上がイッセンタカサゴだった。
これは珍しい。
いなくなってしまう前に是非撮っておかなければ……
と、例年は春先に出番がくることはまずないフィッシュアイレンズを装備して、イッセンタカサゴの群れをとりあえず撮った。
とりあえず目的は果たしたものの、ポートとレンズを交換するのが面倒くさかったから、その後数日はフィッシュアイレンズのまま春の海を潜っていたところ、その際遭遇したのがこちらの方々。
イッセンタカサゴの群れに出会っていなかったら、この時は例年のようにマクロレンズ装備だったはずで、そうなるとワタシの地団駄で発生した大地震と津波により、水納島は水没していたことだろう。
水納島が現在も健在なのは、イッセンタカサゴのおかげなのである。
ありがとう、イッセンタカサゴ。
そんなわけで、その春に観た群れがこれ。
画面外にもたくさん群れていて、そのほぼすべてがイッセンタカサゴだった。
巨群の中に3匹しかいなかったその昔とは大違いだ。
中層〜上層を泳いでいるときは青っぽい体をしているイッセンタカサゴたちは、タカサゴやニセタカサゴたちと同じく、根に降下してくると体色を赤っぽく変える。
根に降下したばかりだと青っぽいものが多いけど…
根の上でワラワラしている間に……
赤っぽくなる子が増えてきて……
根に近いものほど赤味が増す。
これもやっぱり「興奮色」ってことなのだろうか。
イッセンタカサゴに限らず、観ていると根に降りてきたら条件反射的に赤っぽくなるような気がするんだけどなぁ…。
その後もコンスタントにイッセンタカサゴを見かけるようになっている。
10cmちょいほどの若魚の姿もよく目にするようになったし…
ある程度集まっているオトナも目にする機会が増えている。
ただ、昔に比べて安定的に数は増えている気はするものの、他のグルクンたちと一緒になって群れていることが多いため、観るときはこういう感じになる。
そのため遠目に群れを観れば、「タカサゴの群れね……」で片づけられてしまうことだろう(その場合、ニセタカサゴも同じ運命にある)。
その点岩場のポイントに行くと、全体の数は少なめながらも、イッセンタカサゴがメインで群れているのを目にする機会が多いような気がする。
もっとも、グルクンに出会うたびにいちいち種類を意識してきたわけでは全然ないので、以上の話はあくまでも「気がする」だけ。
ひょっとすると水納島でも、昔からフツーに、イッセンタカサゴだけの群れが泳いでいたかも……。