全長 18cm(写真は若魚なのでもう少し小さいはず)
このところ(2019年3月)ニザダイの仲間に注目している。
といっても季節柄ニザダイ類を追って連日潜るというわけにもいかないので、ヒマにまかせてかつて撮った写真などをふりかえっている。
すると、10年前に撮った冒頭の写真を発見(?)した。
撮影した年月日と使用したレンズはわかるものの、画像ファイル名に何も記入していないため、いったい水納島のどこで撮ったのかまったくデータが残っていない。
背景からすると、岩場のポイントの転石帯あたりだろうか。
というか、そもそも今回ふりかえるまで、出会ったこと自体記憶の片隅にすら残っていなかった。
おそらく当時は、ふ〜ん、ハギの黄化個体ね…程度で済ませていたものと思われる。
ところがこの方、実は沖縄では超レアなのだ。
その名もキンリンサザナミハギという。
ハワイでよく観られる「コーレタン」が小笠原にもいたってことでこの和名が付けられたものの、その後の精査でハワイで観られるものと小笠原のものとは別種とされたようだ(@2001年)。
ネット上で見ることができる小笠原で撮影された写真を見ると、たしかに眼の周りの「金輪」がさほど明確ではないっぽい。
なのでハワイのコーレタンとイコールではないにしろ、本来の姿は青味がかったボディに目の周りだけ黄色い模様が入っているといういで立ちだ。
ただし幼魚の頃は、写真の子のようにキレンジャーのものもいるらしい。
あいにく10年前に撮った写真の子がどれくらいのサイズだったかすら覚えていないけれど、体つきからして幼魚というほど小さくはなさそう。
オトナになりかけの子なのだろうか?
いずれにしてもこのキンリンサザナミハギは、「小笠原にしかいない」と言ってしまっても過言ではないほどにその他の地域ではレアであることはたしか。
そんなハギに、10年前に出会っていただなんて……。
海中で出会えた時にその驚きとヨロコビを味わえていたら、たいそうシアワセだったことだろう。
なにはともあれ、ともかくも記録写真を撮っておいてよかったよかった。
※追記(2020年4月)
今年(2020年)3月のこと、リーフ上の浅いところで安全停止を兼ねて遊んでいると、ゴマハギでもナガニザでもコクテンサザナミハギでも、その他とにかくよく見るニザダイ系の幼魚ではない小さなハギが目についた。
独特のこの体型、えーとえーと……なんだっけ?
そうだ、キンリンサザナミハギだ!!
海中で初めてそれと認識しつつ出会うことができた。
まだ4cmほどの幼魚ながら、近くにいるお馴染みのハギたちとは全然異なるフォルムなのですぐに気がついた(一時期ニザダイチビに注目しまくった甲斐があった…)。
ただし近くからストロボを浴びせたからかわりと黄色が鮮やかに見えるけれど、肉眼ではもっと濃い色をしている。
ボンヤリしていると、そのまま「地味なハギね…」でスルーしてしまいそう。
でもこのキンリンサザナミハギ、なにげにその口元は、「なにがそんなにうれしいの?」と訊きたくなるくらいずっとゴキゲンだった。
まだ幼魚なので行動範囲はさほど広くないだろうから、しばらくは同じ場所で会えるはず。
6日後に訪れてみると、案の定ほぼ同じ場所にいてくれた。
口元はいっそうゴキゲンになっていた。
※追記(2021年9月)
上の「追記」のチビは、その後もほぼ同じ場所に居続けてくれたため、さらに成長過程を追うことができた。
さらに一週間経った頃は…
間近でストロボ光を当てても、鮮やかな黄色にはならなくなっていて、さらにそれからひと月ちょい経つと…
風格すら漂い始めてきた。
6月になると、幼魚の頃のオドオド泳ぎはどこへやら、そのあたりを仕切っているかのような堂々とした泳ぎっぷりになっており、行動範囲も随分広がっていた。
こうなるともう、リーフ上の浅い世界では暮らしにくくなっていたのだろうか、本格的夏を迎える頃には、すでに姿を消していた。
一方、同じ年の5月には、まったく別の場所のリーフ際で、昔出会っていたタイプと同じくらいマッキッキの子に出会った。
残念ながらこのキレンジャーはこの時かぎりのことで、その後再会は果たせなかったから、このあとどのような姿になっていったのかはわからない。
でも……
ここにいたり、ふと気がついた。
キンリンサザナミハギって、これくらいの頻度で出会えるものだったの??
…と思い始めた矢先のこと、普段よく訪れる岩場のポイントで、楽しげに数匹で泳いでいるハギたちの姿はといえば……
あれ?
これってキンリンサザナミハギなんじゃね??
写真の2匹のほか、この場所にはもう1匹居て、都合3匹がつかず離れずスイスイ泳いでいた。
その後も随所で、パッと見は地味ながらもキンリンサザナミハギらしきハギとちょくちょく出会っている。
どうやらキンリンサザナミハギ、沖縄でも「超」がつくほどレアな魚ではないのかもしれない……。
※追記(2022年12月)
超レアではないことがわかってきたとはいえ、チビターレに出会う機会はそれほど多くはないキンリンサザナミハギ。
今年(2022年)7月に出会った子は、人生最小級だった。
コガネヤッコのような趣きもある、鮮やかな黄色とささやかなブルーが美しい3cmほどのチビターレだ。
とはいえこの時は40mmレンズだったので、ファインダーで覗いている目には、魚が何をしているかというところまで見えていなかった。
そのため、後刻PC画面で写真を見て驚いた。
このキンリンちゃん、撮っている間にえげつない顔を見せてくれていたのだ。
ときおりえげつない顔をしながら、その後も行動範囲を徐々に広げつつほぼ同じ場所に健在で、2か月経った頃には…
…やや黒ずんでいた。
それでもオトナに比べれば、よっぽど色鮮やかだ。
ポイントによってはけっこうフツーにいることがわかってしまったキンリンサザナミハギ、オトナになってもこの色だったら、さぞ人気者になったろうになぁ…。