水納島の魚たち

クロオビマツカサ

全長 25cm

 アカマツカサ類を写真だけで見分けるのは、研究者でも至難の業なのだそうな。

 特に、鰓蓋あたりに黒い帯模様がある種類は紛らわしく、一応区別の仕方的特徴が記されていたりするけれど、「個体差」でどうとでもとれることが多い。

 でも画像だけではわからなくとも、潜っていると、これはどうもザ・アカマツカサとは異なる暮らし方をしている……と思える集団がいることに気づく。

 夜の帝王アカマツカサ類といえば、夜になると外に出てエサを漁りながらブイブイ言わせ、日中は暗がりで静かに群れている。

 ところが上の写真の集団は、日中のどんな時間帯でも必ず表で群れているのだ。

 そこは砂地のポイントの、水深15m〜20mにまたがるところに横たわる8畳間ほどの根で、彼らはいつもその上で集団を作っている。

 周りが砂地だからか、体色を薄くしていることが多く、暗がりで観る他のアカマツカサ類と比べると随分明るい。

 でものんびりモードを解除されると、赤味が増す。

 けっして密集隊形ではないけれど、その数はけっこう多い。

 危険を察知すると多少は根の内側に逃げることもあるけれど、おおむねこのように外に出て集団を形成している。

 この根には他にヨスジフエダイアカヒメジも群れていて、青をバックに赤と黄色が合わさるとけっこうにぎやかになる。

 そこにグルクンの群れが通りかかったりすれば、淡い三原色揃い踏みで、とんでもなくカラフルメルヘンな夢のシーンに。

 これまで遭遇した「夢」シーンはいつもゲストをご案内している時だったから、残念ながら記録には残せていないのだった。

 で、これまではこの魚たちを、「日中なのに外で群れているアカマツカサ」とちょくちょくご案内してきた。

 しかし。

 どうもこのふるまいは、アカマツカサではなさそうだ。

 …ということには随分前から薄々気がついてはいた。しかし、だったらなんなのよ、という話になると深みにはまりそうなので、これまでそっとしておいたのだった。

 今回一念発起してこの魚たちの正体を調べてみたところ、ついに結論に達した。

 彼らはクロオビマツカサである!

 …と力を込めて言いつつ、念のために繰り返しお伝えしておこう。

 アカマツカサ類を写真だけで見分けるのは、研究者でも至難の業なのだそうな。

 違ってたらゴメンナサイ……。

 違ってなかったとしたら、きっとこの子もクロオビマツカサのはず。

 砂地の根の上だけじゃなく、リーフ際にもいて、やはり日中でも表に出ていることが多いのだけど、近寄るとこうしてサンゴの下に隠れる。

 もしこの子もクロオビマツカサなのだとすれば、リーフ際でセグロマツカサと一緒にいる子たちは、たいていクロオビマツカサってことになる。

 < で、結局のところ、アカマツカサとどう違うの?

 それはアカマツカサの稿にて……。

 追記(2023年11月)

 砂地の根の岩陰に、夜の帝王たちのチビターレがチョロチョロ…と姿を見せては隠れ、隠れてはまた姿を見せることがある。

 オトナでさえ見分けがつかないのにチビターレの頃から区別するなど、シロウトにはどだい不可能…と思ってはいても、多少あがいてみたところ、どうやら↓これはクロオビマツカサのチビっぽい。

 せいぜい4cmほどのチビターレで、このチビ以外にも同じところでチョロチョロしていた他のチビはこういう感じだった。

 黒帯模様の形からして、両者は種類が異なると思ってまず間違いない(もう一方はアカマツカサか?)

 で、先の写真がホントにクロオビマツカサのチビターレだとすれば、チビの頃はオトナとは違って背ビレ尻ビレ尾ビレが随分黄色っぽい。

 これはクロオビチビターレの幼魚の特徴なのだろうか?