全長 30cm
ヤンセンニシキベラをオンリーフオンリーライフの極みのように紹介したけれど、実はそれを遥かに上回るのがこのリュウグウベラだ。
砂地のポイントのような「リーフ上」の範囲が狭い環境では暮らしていないからか、普段よく訪れる砂地のポイントでは目にしたことがない。
それどころか、恥ずかしながらこの魚の存在を知ったのは、ターボスネイル生息密度調査をしている際に、ゴマモンガラがエサ探しをしているところに他の魚が集まっている様子が面白かったので、水面からコンデジでテキトーに撮ったこの写真……
…に写っていたから。
よく見るとここにはハコベラやヤンセンニシキベラ、そしてチラリとセナスジベラの「オンリーフオンリーライフ」なヤマブキベラの仲間たちが勢揃いしているのだけれど、それらに比べてリュウグウベラがいかにでっかいかおわかりいただけよう。
で、蒙昧なるワタクシは、このでっかいリュウグウベラを、「超ド級のハコベラ」と信じて疑わなかった。
なにしろそれまでにリュウグウベラなんて魚を意識したことがなかったのだもの。
本島などでビーチエントリーでダイビングをされる方々なら、エントリーしてからリーフ上を泳ぎ過ぎる際にちょくちょく目にされるのだろう。
ビーチエントリーがもっぱらだった学生時代のワタシも、きっと彼らリュウグウベラの姿を目にしているはず。
しかし当時のワタシがリュウグウベラを認識しているはずはなく、その後リーフの外でのボートダイビングがもっぱらになってしまえば、彼らと会う機会などまずない。
ともかくもそんなわけで今さらながらその存在を初めて知ったあと、機会があればリーフ上に彼らの姿を探してみた。
どうやらリュウグウベラは、でっかいだけに縄張りの範囲も広いのだろう、水納島の砂地の主要ポイントのリーフの「奥行き」ではベンガルトラが西表島で暮らすようなものらしく、もっともっとリーフ上の環境が広い、岩場のポイントのリーフ上を生活の場と定めているらしい。
岩場のポイントであれば浅い部分がそのまま沖に向かって伸びているから、場所によってはその端のほうまで来ているリュウグウベラの姿を観ることもできた。
ただしそこにずっと踏みとどまってくれるわけではなく、すぐにまた浅いほうへ浅いほうへとグングン去っていく。
産卵のタイミングのときこそリーフの端あたりでオスとメスの姿を見かけたものの……
ちゃんと「撮る」となるとかなりのハードルを乗り越える必要があることもわかった。
というわけで、今のところ(2020年現在)そのハードルの数をようやく知ったところで、彼らの姿をメスも含めてじっくり撮るのはかなり先のことになりそうだ……。
※追記(2021年9月)
水納島の場合、同じ砂地のポイントでも、航路の東側と西側とでは、リーフ上の環境が幾分異なっている。
島を取り巻くインリーフも島の北西方面に向けて随分広がる形になっているくらいだから、リーフ上、いわゆる礁原と呼ばれる部分の範囲も、さらにグルリと回った岩場のポイントと同じくらい広いのだ。
そのため広い礁原を暮らしの場とする魚たちがリーフ上でよく観られ、オトナのリュウグウベラも、ときにはリーフ際まで顔を出すことがある。
ただ、今夏(2021年8月)に撮ったリュウグウベラのオスは、リーフ上でエサを食べている際の色味とはいささか趣が異なっていた。
夏の盛りのことだったから、繁殖期で盛り上がっている興奮色なのだろう。
※追記(2022年12月)
今年(2022年)の春にリーフ内で潜っていたところ、波打ち際にほど近いサンゴ群落の傍を、リュウグウベラのメスがスイスイ泳いでいた。
チャンス!
波打ち際近くでもやはり行動範囲は広いようで、あいにくじっくり撮るというわけにはいかなかったものの、まずひとつ目のハードルは越えたかな…。