全長 7cm
キリンミノ、ヒレボシミノカサゴと同じく、ヒメヤマノカミ属のシマヒメヤマノカミ。
たびたび昔話になって恐縮ながら、まだフィルムで写真を撮っていた当時、日本の主要な魚図鑑で本種を見ると、撮影地はたいてい伊豆だった。
そのため長い間この写真の彼(ヤマノカミという名である以上、「彼女」?)が本当にシマヒメヤマノカミなのかどうか、自信はなかった。
ところがなんのことはない、熱帯域を対象にした洋書の図鑑には、フツーにこのシマヒメヤマノカミが載っていた。
たしかに日本の図鑑にも、分布域としてインド・太平洋と書かれてはいるから、シマヒメヤマノカミがいてもなんらおかしくはなかったのだろうけれど、当時沖縄方面で撮影された写真が図鑑上で確認できなかったってことは、世間的に沖縄で撮られたシマヒメヤマノカミの写真が少なかったってことなのかも。
当時から水納島ではリーフの中でよく観られ、海水浴場のエリア内でも、日中は岩やサンゴ群体の下などに潜んでいることが多かった。
茶色がかった体は目立たないものの、緑色に妖しく光る目が魅惑的だ。
当時を思えばすっかり変わり果てた海水浴場エリアのこと、今ではシマヒメヤマノカミなんて観られなくなっているのかなぁ…
…と思いきや。
昨年(2019年)のシーズン中には、桟橋の付け根付近の壁に、ピト……と張り付いている彼女がいた。
後ろ向きですみません。
すぐ下の砂利が波打ち際の海底で、水深1mも無いくらいの浅いところ。
図鑑的説明では、シマヒメヤマノカミはわりと砂泥底も好むようだから、むしろ現在の桟橋脇〜海水浴場エリアのほうが好みに合っているのかもしれない。
一方で、これまた随分昔のことながら、水深30m以深のとある場所で、シマヒメヤマノカミがやはり「ピト………」とはりついていたことがある。
昔とはいえデジカメで撮った写真だから、今世紀になってからのこと(2005年)。
面白いことに、リーフ内で観られるものに比べると、その体色は随分赤味が強い。
セソコテグリの稿で触れたように、これは水深による「より目立たない色」の違いなのかもしれない。
ちなみに、よく似た魚にヒメヤマノカミがいる。
彼らも胸ビレが縞々になってはいるけれど、シマヒメヤマノカミのような縞模様上の点々(下の写真矢印の先のほか、たくさんある点)がヒメヤマノカミには無いから、簡単に両者の区別はつく。
水深1mから30m超まで姿を現すとなると、もはやどこにでもいるといっていいかもしれないシマヒメヤマノカミ。
といいつつ、実はその中間の水深、すなわち通常のファンダイビングで訪れるようなところでは、不思議とこれまで会ったことがないシマヒメヤマノカミでもあるのだった。