全長 20cm
桟橋を歩いているときにふと海面を見ると、ときおり「おっ?」という生き物に出会うことがある。
ナンヨウツバメウオの幼魚、マツダイの幼魚、海底をトテトテ歩くカラッパ、得体の知れない幼魚などなど。
このトゲヨウジも、そんなときに目にする機会が多い魚だ。
何かのゴミかなぁ?
海草の切れ端かな?
ん?
ん?
あ、トゲヨウジだ!
発見する場合はたいていこんなパターン(ちなみに左側がトゲヨウジで、右側は海草の切れ端)。
ブツ切りにすると断面が台形になっていそうな角ばったボディもさることながら、木から尻尾だけでぶら下がるクモザルのような尾ビレも特徴的だ。
ヨウジウオの仲間にはクチナガイシヨウジのように尾ビレにちゃんと団扇のように鰭膜が開くものがいるけれど、このトゲヨウジの尾ビレはタツノイトコなどと同じく鰭膜がなく尻尾のようになっていて、何かに絡み付くために機能しているのだ。
そのため写真のように海草の切れ端や枝に尾ビレを絡めて、水面をプカプカ漂っていることが多い。
またその習性から、ボートを係留しているロープに尾ビレを絡めて寄り添っていることもある。
よく目にするのはそういった桟橋脇の水面付近やリーフの中の表層で、通常のボートダイビングではお目にかかる機会はほとんどない。
出会いたければ、毎日桟橋脇の水面をチェックするか、ビーチの中を徘徊したほうが話は早いといっていい。
もっとも、桟橋脇に停めているボートの上で器材をセッティングしている際に、海藻に寄り添ってプカプカ浮いているところを、船べりから見ることができたりもする。
そうやって目にする機会は毎年何度もあるのだけれど、シーズン中の桟橋脇周辺となると、そうそうカメラを携えてドボンと海に飛び込める環境ではないため、あいにく画像としてほとんど記録していないのだった。
※追記(2020年8月)
ところが今年はコロナ禍のために、夏真っ盛りというのに海水浴場が閉鎖、ダイビングのゲストも毎日少数という、お金では絶対に買うことができない願ってもないシチュエーションが出来していたおかげで、桟橋上から見かけたトゲヨウジをすぐさま撮ることができたのだった(冒頭の写真)。