(エソの仲間たち)
全長 20〜30cm
エソの仲間はなにげに種類が多く、ミナミアカエソなどが所属するアカエソ属だけでも、和名がついているものが14種くらいおり、他の属も含めるとえらいことになってしまう。
それらが皆チョウチョウウオ類のようにひと目で違いがわかるカラーリングならともかく、みなだいたい同じような姿形に色味となれば、ヒレの数やウロコの数を数えるわけでもない我々盆百のシロウトが種類を正確に区別できようはずがない。
まぁ、砂地の根の傍らでスカテンなどの小魚を虎視眈々狙っているのはまずミナミアカエソだろう…
体側に破線状にラインが走っているのはヒトスジエソだろう…
…といった見当がつくものもいるにせよ、冒頭の写真のように顔から撮っている写真となると手も足も出ない。
というわけで、エソの仲間たちもイスズミの仲間同様、観られるものぜ〜んぶ(といってもせいぜい3〜4種類くらいだけど)ひっくるめて「エソの仲間」として紹介してしまうことにする。
水納島の白い砂底ポイントの根にはスカテンやハナダイ類など数多くの小魚が群れ集っている。
エソ(おそらくミナミアカエソ)たちにとっては常に目の前に御馳走が乱舞している状態といっていい。
なので彼らは小魚舞う根の傍らで、隙あらばいつでも襲い掛かれる体制を維持しながら、ジッとしていることが多い。
ここから助走緩めのロケットダッシュをして小魚をゲットする、というイメージでジッとしている彼ら。
ひとたび本気を出した彼らのロケットダッシュは、目にも止まらぬ速さを誇る(動画はエサゲットのためのダッシュではありません)。
ただ、エサゲットの様子を観ているかぎりでは、いかにものすごいロケットダッシュといえどもさほど効率がいいようには見えない。
そのわりには根を取り巻くように集まっているエソたちの数は多く、時には↓こんな状態になっていることもある。
エソたちが小魚を求めて中層を泳いでいると、ユカタハタなど根のボスたちはゴッドファーザーの役目を果たすべく、果敢にエソを追い払おうとする。
でもエソたちの数があまりにも多いからボスの目が行き届かず、近年のエソたちはやりたい放題でいささか調子に乗っているフシもある。
たとえホントに調子に乗っていようとも、中層を舞う小魚たちを狙ってジッとしている姿には、生き残りをかけた彼らの切実な暮らしぶりを感じることができる。
しかしなかには濡れ手で粟的な左団扇待機態勢のものもいる。
イソギンチャクから大きく離れることはまずないクマノミのチビたちを、虎視眈々と狙っている之図。
って、相手がクマノミだったら、エソがひとたび本気を出せば、片っ端からゲットできそうなものなのに、あえてこのようにジッと待ってみせるのは、なにかこう、エソ界の食事作法のようなものがあるのだろうか…。
ともかくこのように「待機」していることが多いエソたち、砂底にチョコンと佇んでいる彼らを正面から観ると、意外に可愛い顔をしている。
可愛いといえば、チビの頃のエソもなかなか。
↑この写真のように5cmほどだと、ハゼの仲間ですか?的な趣もある。
また、地味地味ジミーな色味のものが多いようでありながら、光を当てるとけっこう模様の赤味が強いものもいる。
砂地の根の周りに限らず、リーフエッジ付近になるとヒトスジエソあたりも複数でいることが多く、2匹一緒にチョコンと休憩している様子は、狂暴そうな顔つきとは真逆のほのぼの感を漂わせている。
時には3匹でいることも。
…ということは、2匹でいるからといってオスとメスってわけではないのだろうか。
リーフエッジの海底よりももう少し浅い、リーフの切れ込みあたりだと、唐突なほどでっかいエソがよくドデンと鎮座している。
水納島でのダイビング中に観られるエソの中ではマックスサイズで(マダラエソか?)、その口元は見るからに狂暴そうだ。
ひとたび獲物を捕えれば、死すとも逃さじ、という決意漲るスルドイ歯のラインナップ。
捕えられた魚たちは、その時点で死を覚悟しなければならない。
哀れ、エソに捕えられたフエヤッコダイ。
とはいえ固くスルドイ棘のあるヒレを全開にして気張られたら、いくら口が大きいといっても飲み込めないんじゃ?
…という心配は無かった。
ゲストをご案内中だったため、食事シーンをずっと観続けているわけにはいかなかったオタマサながら、フリータイムになってから観に行ってみると…
お腹が膨らんでいる!!
そのまま飲み込んだんだ……。
エソたちの獲物は、フエヤッコダイのようにのんびりヒラヒラ泳いでいる魚たちだけとはかぎらない。
いざとなるとダッシュで巣穴に逃げてしまえる能力があるヤセアマダイなのに、エソにとってみれば赤子の手をひねるがごときたやすい作業なのだろうか。
ただし、スカテンなど小さめの魚を食べるときは、ゲット後3回くらいモグモグするとすぐに飲み込んでしまうところ、ヤセアマダイのように長細いとさすがに飲み込むまで時間がかかり、おかげで食事シーンを撮ることができた。
スカテンやハナダイが群れ集い、いざとなればヤセアマダイだってゲットしてしまえるとなれば、そりゃエソたちが調子に乗るのも無理はない。
しかし。
好事魔多しとはよく言ったもので、そこで謙虚さを忘れると↓こういうことになる。
ついにボスの逆鱗に触れ、年貢の納め時となった(おそらく)ミナミアカエソ。
サバイバル環境の場合、出る杭は打たれるのではなく喰われるのだ。
そうはいっても全体的に見れば、喰われるよりも食べていることのほうが多いエソたち。
そのためには欠かせない大事な歯をはじめ、口周りのメンテナンスには余念がない。
ノドチンコが見えそうなくらい(ありません)大口を開けて、いったい彼は何をしているのかというと……
…もちろんホンソメワケベラケア。
口の中、鰓の中など、食事後に入念にケアすることによって、いつも清潔に保つことができるのだ。
そのおかげで、リーフの上をフワリと泳いでいるときにお日様の光を浴びると…
…エソはレインボーに輝くのだった(脚色アリ)。