全長 50cm
巨大なイソマグロやロウニンアジ、はたまた群れなして渦巻くギンガメアジやバラクーダといったスター列伝に名を連ねる魚たちがいる一方で、同じ光物なのに雑魚扱いという魚は数多い。
このイケカツオも、これまで誰かの話題に上ったのを耳にしたことがない。
イケメンなんていう言葉がしっかり日本語になっている現在では、イケカツオと言われると、なんだか「イケてるカツオ?」てな勘違いをしてしまいそうな名前。
しかしながら、そんな言葉を誰も口にしていなかった昔からすでにこの魚はイケカツオだった。
いったいぜんたい、なにが「イケ」でどこが「カツオ」なのかさっぱりわからないものの(カツオはサバ科なのに対し、イケカツオはアジ科)、リーフ際で煌めく川になっているキビナゴの群れめがけ、数匹で襲い掛かる姿はなかなかに勇ましい。
ただ、襲い掛かる際はもちろん通常の3倍のスピードで迫るわけだし、特定の種類を除く光物はすべて「光物」として認識しておられる方が、この魚こそが「イケカツオ」である、などと認識されるはずもない。
少なくとも、ニジョウサバと区別がつかない方にとっては、束の間の出会いの間にイケカツオを認識するというのは至難のワザに違いない。
残念ながら近年は、リーフ際でイケカツオがキビナゴに襲い掛かるシーンを観る機会は激減してしまった。
かといってまったくいなくなってしまったわけではなく、あまりヒトが潜っていないところに行ってみると、以前と変わらぬ姿で浅いところを泳いでいたりもする。
ヒトがどれだけいようと平気なニジョウサバとは違い、イケカツオはそのあたりがビミョーにデリケートなのかもしれない。
※追記(2023年10月)
今夏(2023年)、小魚の群れを求めてリーフエッジ付近を席捲するカスミアジ軍団に、目新しいメンバーが混入していた。
イケカツオだ。
それも1匹2匹がチョロッと混じっている程度ではなく、イケカツオの群れとカスミアジの群れ(とオニヒラアジ)の混声合唱団状態。
カスミアジの群れは近年はフツーに観られるようになっているけれど、イケカツオのこれほどいるシーンとなると、人生初遭遇だ(これまでは遠すぎてイケカツオ認定できなかっただけかもしれないけど)。
この混声合唱団、イケカツオも相当数いたんだけど、1枚の画像に写せたのはこんだけ。
それでも人生最多記録のイケカツオ。
もともと浅所が主な暮らしの場だから、リーフエッジエリアが広いところを泳いでいれば、遭遇頻度はもっと増すに違いない。
さらに季節が進んで秋になると、カスミアジもイケカツオも倍に膨れ上がった巨群に遭遇した……
…オタマサが。
イケカツオ、どうやらいるところにはたくさんいるようである。